第三体育館にて練習をお手伝いしている時だった。
「おや?」
「おやおや?」
「おやおやおや?」
『月島君!』
月島君がふらりと第三体育館に現れた。やはり練習をする気になったんだろうか。
「…聞きたいことがあるんですが、いいですか」
「いーよー」
快く承諾してくださった木兎さんと黒尾さん。2人ともノリがいい。
「すみません、ありかとうございます」
月島君の目が力強い。迷っていた時とは違う。月島君は言葉を続けていく。どうして"たかが部活"なのに、全力でやるのか。それは将来のためになるのか。そして木兎さんがその問いに対して口を開いた。
「__"ただの部活"ってなんか人の名前っぽいな」
「!おぉ…、タダ・ノブカツ君か…!」
『すごい…確かに!』
「いや待てちげーよ!たかが部活だよ!」
「!!ぐあぁ!?そうか〜っ!人名になんね〜っ!」
「惜しかった!」
なんて真剣に話しているものだから笑ってしまいそうになった。それよりも話から逸脱している事を注意しなければいけないんだろう。
「ツッ込んだ方がいいですか?」
「いいよ、限りが無いから」
赤葦さんと月島君は冷静だ。私も見習わなけれならない。
「あーっ眼鏡君さ!」
「月島です…」
「月島君さ!バレーボール楽しい?」
「……?……いや…特には…」
「それはさへたくそだからじゃない?」
木兎さんが話しかけたと思ったら、最後のセリフで衝撃を受けたように固まった。素人だからまだわからないが、月島君が下手くそだという印象はない。
でも、木兎さんだって初めからバレーが楽しかったわけではないらしい。"ストレート"打ちが試合で使い物になる様になってからは、得意だったクロス打ちを止められて悔しくて。だからストレートを練習して、そのストレートが決まって。
「その一本で「俺の時代キタ!」くらいの気分だったね!!」
嬉々として語る木兎さんはバレーに愛されている人だ。そして同じだけバレーを愛している。
「-"その瞬間"が有るか、無いかだ」
『………!』
木兎さんの言葉が私の心にスッと入り込んできた。すごい……。私は何故部活をやっているんだろうと考えたことはなかった。ただ仲間と一緒に一つの目標に向かって勝利していく喜びが、私の原動力になっていた。
私はいつの間にかその"瞬間"を探していたんだ。
歓喜に満ちた感情。秘められてた熱情。私の中の全てが喜びに満ちたその瞬間。
「ただ、もしその瞬間が来たら…、それがお前がバレーにハマる瞬間だ」
そして、私もバレーにハマっていく。