その後、月島君は質問に答えたお礼に練習に付き合えと言われ、しぶしぶ練習に付き合っていた。
しぶしぶとはいえ自主練をするとは……お母さん感動でいっぱいです。こんなこと本人に言ったら、ヒヨコに育てられた覚えなんてないけどって言われそう。
……これが月島君の選択だ。
彼はあの時、悩んでた。どうすればいいか自分でも分からなくなっていたんだと思う。だけど言葉や先輩たちに救われた。
そして私の心も変わった。もっとバレーを見ていたい、私の小さな力でも頑張る人たちを支えたいと。
私には月島君はもう答えが見つかったように思える。それがとても嬉しかった。悩みに悩んだ末に見つけた答えなら悔いだってないはずだ。負けたら悲しい。勝ったら嬉しい。単純な考えだ。だけど私は勝っても負けても泣いちゃうと思う。それだけみんなと過ごした時間は濃くて、かけがえのないものだったのだ。
第三体育館での練習後、上機嫌で廊下を歩く。今日はいいことがありすぎた。スキップしてしまいそうな勢いだ。
「ヒヨコ」
『月島君…?』
するとさっきまで第三体育館で練習していた月島君が私の名前を呼んでいた。廊下には私たち以外誰もいない。
『忘れ物しちゃった?』
「…いや、違うけど」
月島君から真面目に呼ばれたことがなかった。いつも冗談めいた感じだった。未だに"名前"って下の名前で呼ばれたことはないけど。
「…その。……ありがとう」
声が小さかった。だけどちゃんと届いた。心のこもったありがとうが。何に対するありがとうなのかはだいたい分かる。しかし私が直接助言をしたわけではないし、はっきり言ってしまえば何もしていない。確信を突いたのは木兎さん。支えていたのはチームのみんな。
『答え、見つかってよかったね』
月島君に答えが見つかったことが、本当に嬉しくて、嬉しくて、泣きそうになったけど笑った。そしたら月島君は耐えきれないといったように近づいてきて頭に手を乗せた。そのまま少しずつ手を動かして撫でられる。
「僕、…なんでヒヨコなんかに心乱されるんだろう」
苦しそうに声を絞り出す月島君。まだ心が痛いのかな。
『月島君、……苦しいの?』
「…苦しいよ。ヒヨコといると苦しくなる」
『ご、ごめん、今行くから……』
苦しい原因が私じゃないならそばにいてあげられるのに。月島が初めて出したSOSに手を差し伸べることさえ許されないのね。
「違う、ヒヨコのせいじゃない。僕の勝手な気持ちのせい」
『よくわからないよ。どういうこと…?』
「いいから、今は黙ってて」
『うん?』
私がされるがままに撫でられる。特別上手なわけじゃないのに、温かくて気持ちがこもってて。また泣きそうになったんだ。
(苦しいと同時に愛しいと言ったら君は笑うかな)