その言葉は、飛雄君の口から飛び出した。
「…好きな奴がいるって聞いた。誰だ、そいつ」
練習後、自動販売機に用事があって、夜に一人で自動販売機前に行くと飛雄君と遭遇した。そして、出てきたのがこの言葉だ。
『え、な、なんでそれを』
「先輩方が話してたのを…たまたま聞いた」
私は、その情報をマネージャーの皆さんにしか言ったことない。ようするにマネージャーの誰かが漏らしたということだ。あぅ………、そんな。確かに誰にも言わないでくださいね何て言わなかったけど、こうして漏らされると恥ずかしくなってくる。
『ひ、秘密!』
「じゃあいるんだな」
『……うん。好きか分からないけど気になってる人はいるよ』
「俺が知ってる奴か?」
『知ってると思う。……バレー部の人だもん』
ここまで言ってしまった。もうこれ以上はヒントを与えない。その前に私の気になっている人を知りたい人なんて飛雄君くらいしかいないだろう。
「他校か!烏野か!?」
『えぇ!……言わないよ!恥ずかしい!』
飛雄君の顔が妙に近い。少しでも動こうものなら、恥ずかしさで目を逸らしてしまいそうだ。勿論今でも十分に恥ずかしさはあるが。
『な、なんでそんな気になるの?』
「……特に意味は…ねぇけど」
すると勢いが半減、急にショボンとし始めた。飛雄君が私の気になる人を知りたい理由。それは、もしかしたら。
『あ、分かった!!』
「………!」
『飛雄君、私が先に誰かと付き合うのが嫌なんでしょう!えっと、おもちゃが取られたみたいな感じ?』
「は?」
『でも、私その人のこと好きか分からないし、そもそもバレーが好きだから、気持ちが私に向く事なんてないと思う。だから安心して〜』
「ちげぇよ!!!ボケェ!」
『ち、違う……!?そんなぁ』
じゃあどうして…。飛雄君は偶に分からない事がある。じゃあつまりどういうこと?
「何話してるの?」
頭を悩ませていると、後ろから低くも高くもない、丁度いい声が聞こえてきた。パッと振り向くと赤葦さんがいた。えぇい、いずれバレるに違いない。
『私の気になっている人の話です〜』
「………!」
その時、その場の空気が固まった……ような気がした。
「影山、もしかして誰か聞いた?」
「……いや、教えてくれなかったんで、聞いてないっす」
『飛雄君ってば物好きですよね!私の気になる人が気になるなんて!』
同意を求めると、赤葦さんは飛雄君に同情的だったことが判明した。男同士通じることがあるのだろうか。
「なんていうか、ドンマイ」
「…っす」
私に味方はいないのですか………!