今日は梟谷にお邪魔しています。
事前の情報によると、木兎さんは非常に寝起きが悪いらしい。そして意外だったのは赤葦さんも手強いという情報。なんでも夜遅くまで話し続ける木兎さんの話し相手になるのが赤葦さんしかいないかららしい。
ここで話を聞かずに寝るとションボリモードに入るのが早いとか。
なんだか苦労人だなぁ。
私はしみじみ感じながら梟谷の教室へ入っていく。
『おはようございますーーー!朝ですーーー!』
梟谷のマネさんによると、大抵は最初の大声で起きるみたい。その言葉通り布団がもぞもぞし始めて、何人か起き上がってくる。
大きな欠伸や声が徐々に聞こえてくるが、なるほど、全く起きないな赤葦さんと木兎さん!!
「あー、名前ちゃん?」
えっとこの人は確かに木葉さんだったかな。
『はい!』
「その2人起こす方法あるけど試すか?」
『あるなら試したいです』
「まず、木兎には耳元で"光太郎起きて"って言えばいい」
『えぇ!そ、そんな、敬語でもいいですか?』
「そこは、タメの方が効果があるな。木兎はぜってー怒らないから大丈夫」
木葉さんの忠実なアドバイス通りのことをしてみる事にした。何人かの梟谷の3年生の視線を感じるのは気のせいだろうか。いや、多分気のせいではない。
とりあえず、朝ごはんに遅れてしまうのはやだから、起こす事にしよう。アドバイス通りになるべく耳に口を近づけて囁く。
『こ、う太郎……、起きて?』
「………!」
言った瞬間パッと目が覚めたらしい。瞬時に布団から起き上がってキョロキョロし始めた。
「今、天使いなかったか!?」
『え…?』
「めちゃくちゃ可愛い声で呼び捨てされたぁぁ!」
その木兎さんの反応を見てケタケタ笑っている部員の皆さん。元々これが狙いだったのだろうか。
1人で天使探しを始めた木兎さんを他所に、今度は赤葦さんを起こそう作戦に入った。
「赤葦に一番有効なのは、名前ちゃんが目覚めのキスをしてあげることだな」
『無理です、無理です……!』
「ま、それは冗談で」
『揶揄わないでくださいー!』
「悪い悪い。おはようございますって言いながら赤葦の頬っぺた触ってみ?」
『触っていいんでしょうか?』
「寧ろ触ってくれなきゃ困るわ」
言われるがままに赤葦さんの近くでしゃがみ込み、頬を触る。私なんかよりずっと硬くて、逞しい。自分がだらしなく思えてくるほどだ。というか現にだらしないのだが。
心の中で失礼しますと言って、徐々に口を開けていく。
『おはようございます、赤葦さん』
「………!」
言った瞬間に、赤葦さんの目がカッと開いた。何が起きているか分からないと言った表情だ。ようやく私と目があった。私はとっさに手を引っ込めた。
『おはようございます!』
「…えっと、なんでここに?」
珍しく赤葦さんが動揺しているのを見て、新鮮味があった。そんなに驚く事だったかなぁ。朝起きたばかりだから、声がいつもより低い。
『今日は私が朝の当番だったんです』
「あぁ、そういうことか……」
合点がいったような、腑に落ちたような、そんな表情。そして顔を両手で覆って、何か考え込んでるらしい。
「…覚えておいてください、先輩方」
私にはボソッと呟いた事の意味が分からなかった。しかし、後ろで傍観していた3年生の先輩方の雰囲気が変わった気がするのは気のせいではないらしい。