第3体育館にて
『皆さんはTシャツどこで買ってるんですか?』
唐突な疑問だった。こんなにも人数がいるのに、Tシャツが被っていないことに疑問を抱いたからだ。
「俺はテキトーにそこらへんで」
「俺は母さんに任せてるから分かんねぇ!!」
黒尾さんと木兎さんが即座に返事を返してくれた。
『お母さんなんですか!素敵です!』
「俺も母さん!!」
翔陽君もお母さんのチョイスらしい。そういえば、いつのまにかこの第三体育館に翔陽君とリエーフ君が加わった。なんだか賑やかなメンツになった。月島君は、木兎さん黒尾さん赤葦さんとよい関係を築いているように見える。
「ツッキーのTシャツは普通だよな」
「当たり前じゃないですか。皆さんのTシャツが変わりすぎてるんです」
「言うようになったな」
「客観的に言ったまでのことです」
月島君の、誰にも態度を変えない姿勢がかっこいいと思う。歳上であろうとズバズバと月島君節を炸裂させている。
「だいたいなんですか、黒尾さんの"東京魂"って」
「別にいいだろ、かっこいいだろ」
「………はい」
「絶対思ってないだろ!」
「2人とも、落ち着いてください」
月島君と黒尾さんの言い合いを制したのは赤葦さんだった。相変わらず人を宥めるのが上手だ。
『そう言えば、私この前赤葦さんが着てたセッター犬のTシャツずっと可愛いなって思ってたんです!どこで買ったんですか?』
「着てみる?」
『いいんですか!!』
「うん。丁度今持ってきてるし」
そう言いながら、エナメルバックの中から、この間着ていたセッター犬の服を出してくれた。洗濯したばかりであろう、それはいい匂いを醸し出していた。私はそれを受け取って、上から着てみる事にした。
『ぶかぶかですねー』
注目ポイントは、肩から落ちそうな襟、長すぎて下に何も履いていないように見える危なさである。グッジョブ赤葦と思ったメンバーがちらほらいたとかいないとか。
『やっぱりセッター犬可愛いーーー!!』
クルクルと回りながら服を眺める名前の無邪気さと笑顔と言ったら、思わず顔が緩んでしまいそうになるほどだったという。
『私も欲しいなぁ……、赤葦さん、これどこで買ったんですか?』
「これは、確か都内のスポーツ用品店だったかな」
『…あ、でも私が買ったらお揃いになっちゃいますね』
照れくさそうに笑う名前を見て、羨ましいぞ赤葦派と俺も可愛いTシャツ買おうかな派に分かれたという。そして更に当の本人は、無表情のまま喜びを噛み締めていたらしい。