ひよこが駆け巡る!





練習試合の後は、みんなが着たナンバリングを洗濯しなければなりません。その為、 ものすごい水の消費になる。

今日も今日とて、みんなが過ごしやすく、快適に1日を送れるように、洗濯をしたいと思います。

「そう言えば知ってる〜?」

白福さんが話を始めた。

「人は自分の遺伝子よりずっと遠い遺伝子の異性を選ぶらしいよ」
『…遺伝子?』

バレーとは全く関係のない話に興味を示す。

「どうやって選ぶかって言うと、方法の一つとしては相手の匂いで選ぶんだって〜」
「ってことは、いい匂いって思った人が運命の相手とかそういうこと?」
「端的に言えばそうだね」

他校のマネージャーの皆さんが話にくいついてきた。

「だいたい何を言いたいか分かったよ」

雀田さんがニヤニヤしながら白福さんとアイコンタクトをとる。

「この中でどの匂いが好みか選ぼうっていう話でしょ」
「さっすが〜、分かってる〜」

この中とは言わずもがなナンバリングの事である。そんな事をしてしまっていいのでしょうか…!大体、誰がどれを着ていたかなんて、分からな………、いや、各校のマネは、自分の高校のメンバーを把握しているはず。スコアを書くときに番号も書いていたはずだ。しかし、スコアを書いていたのは私ではない為、烏野のメンバーが何番だったか正確には覚えていない。

「でも、私たちが選んでもね〜」
「そうそう、後輩ちゃんが選んでくれればね」
『………!』
「………!」

嫌な予感しかしません。こういう時の先輩後輩という立ち位置は非常によくない。しかし逆らえないのも事実。

「ってことで、名前ちゃんと、仁花ちゃん、嗅いでみて!」

実験台にされたような気分だ。私は各校のナンバリングを受け取って、一つずつ嗅いでいく。仁花ちゃんも同じ作業をしている。しかし見ながらだとどの高校のナンバリングか分かってしまうので、目を閉じるように指示された。

私は途中で出会った幾つかのいい匂いナンバリングを寄せていく。それを見てニヤニヤしているであろう先輩方。今日ばかりは悪魔に見えます……!

悔しがっていると、凄くいい匂いのナンバリングに出会った。柔軟剤の匂いではない、その人の匂いだ。そしてその次の次あたりにまた凄くいい匂いに出会った。

私は少し期待を持ちながら、その二つのナンバリングを少しだけ奥に寄せる。そして作業が終わると、先輩方がお疲れ、と声をかけてくれた。私はゆっくり目を開ける。仁花ちゃんはまだ終わっていないようだ。

「よーし、お疲れ様。………早く知らせてあげよ」
『…………?』


後半の方は声が小さくなっていたので、あまり上手く聞こえなかった。


「お、終わりまひた!!」

盛大に動揺中の仁花ちゃんも終わったらしい。私とは全く違う人のナンバリングを選んでいた。やはり好きな匂いは人それぞれ違うのだろう。

「仁花ちゃんもお疲れ〜。さ、洗濯始めようか〜」

もはや何の為に選んだのか分からないが、とびっきりいい匂いに出会えたから良しとしよう。しかし、一体あれは誰のナンバリングだったんだろう。

***

1年マネが不在の時、他のマネは先ほどのナンバリング選びの話題で盛り上がっていた。

「名前ちゃんは木兎と木葉と赤葦のナンバリングを選んでたよ〜」
「音駒は確か黒尾クンと孤爪クンだったかな。あともう一人くらいいたけど、ちょっと誰だか覚えてない」

と次々に名前を挙げていくマネージャー達。

「でもさ、驚かなきゃいけないのは、烏野はもれなく全員のナンバリングを選んでたことなんだよね」

そう、彼女は烏野のメンバー全員のナンバリングを選んでいたのだ。その事実に誰よりも幸せを感じたのは清水潔子、その人だった。

名前にとって烏野のメンバーの匂いは嗅ぎ慣れた匂いであり、その匂いはとても落ち着くものだった。だからこそ無意識に選んでしまったのかもしれない。

前 |143/226| 次