皆さんとの別れだと考えるとよけい寂しくなるため、せめてバーベキューの時だけは楽しい気分でいようと、気持ちを切り替えることにした。悲しいことは忙しく動くことによって忘れるかなと思い、積極的にお肉や野菜を外に運ぶ。
『バーベキュー♪バーベキュー♪』
みなさんの主食となりそうなお肉を運びながら能天気に歌を歌う。なんの計画性もない、ただただ同じ事を繰り返すだけの歌だ。
準備は万端。
あとは焼いて食べるだけだ。
監督さん達が粋な事をしてくれたため、こうして練習後のご褒美にありつける。なんて幸せなんでしょうか!!!
「持とうか?」
気分良く物を運んでいると赤葦さんが声をかけてくれた。
『軽いので大丈夫です!!』
「それなら良かった」
『早く食べたいですね!!さっきからずっと舌がうずうずしてるんですよ〜』
「俺も腹減ってるし、早く食べたい」
赤葦さんと歩きながら体育館側に向かう。体育館の横でバーベキューが行われる事になっているのだ。
「合宿どうだった?」
『技術面でも精神面でもすっごく参考になりました。それに、いっぱい驚きました』
感心する事より驚く事の方が多かった気がする。私たちより凄い高校があって、そんな人たちと戦って。何度も負けを繰り返したけど、そのことは大きな財産になった。負けたから全てが台無しになるわけではない。負けるからこその価値もあるのだ。
『沢山の人と出会って、いろんな事を経験して、一回り大きくなれた気がします!』
「こっちもいい経験をさせてもらったよ」
互いにとっていい経験だとしたらとてもいい事だ。どれだけこの合宿が有意義だったのか分かる。
『あっ!あと、こうして赤葦さんにも会えました!』
合宿といえば、練習もそうだが絆が深まった。自校も他校も交流を通して絆を感じあった。とてもいい出会いだったと胸を張って言える。
『素敵な方々に会えた事がとっても嬉しいです』
一緒にいると自然に笑顔になれる。そんな人達ばかりだ。
「名前って、どこにもいないタイプの女の子だよね」
『……と言いますと?』
「……初めてだよ。こんな気持ちになったの」
赤葦さん、馬鹿な私にも分かりやすい説明をお願いします……!隣を歩いていた赤葦さんが、立ち止まったため、私も立ち止まった。
「…俺も名前に会えて良かった。心からそう思ってるよ」
他でもない赤葦さんに言われる事がこんなに嬉しいとは思っていなかった。赤葦さんには他にはない魅力が沢山ある人だ。
彼はきっと私にとって特別な人なのかもしれない。こうして私の特別な人リストに新たに名前が加わったのだった。