春高一次予選当日。
『翔陽君、大丈夫?』
げっそりした翔陽君に声をかける。彼の具合が悪そうなのは、また吐いてしまったからだ。試合前になるといつもこうだ。プレッシャーに弱いのだろうか。分かる、分かるよその気持ち。緊張すると気持ち悪くなっちゃうよね。
「大丈夫大丈夫。来る途中で吐いたしスッキリした。お腹空っぽだけど」
「朝から大量にカツ丼食べて来るとかウケる。そら酔うわ」
「このボゲ日向くそボゲェ!」
「影山の罵倒ボキャブラリーは「ボゲ」だけだなあ」
「!!頑張って増やします」
月島君の煽りに続いて、飛雄君が罵倒する。罵倒ボキャブラリーを増やすってどういう事ですか。増やさなくて大丈夫です。
「勝負の日はカツ食うだろ普通!」
「普通とは一体」
ゲン担ぎの意味で食べるという事だろう。当日大量に食べるかは分からないが、カツを食べたいという気持ちも分かる。ただ、我が家の場合は勝負事の前日の夜に食べるのが慣習だが。
『カツ美味しいよね!』
「流石名前ちゃん!分かってる!」
『あ、そうだ、栄養補給ドリンクあるけど飲む?』
「おー!いいの?ありがとう!」
私は自分のカバンから買っておいた物を取り出す。これは部費で買ったものだが、飲むタイミングは部員たちに任せられている。人数分以上購入したため、予備もあるので、翔陽君がもう一本要求したとしても大丈夫だ。
『はい、どうぞ』
「うぉー、ありが、っておい!影山!それ俺のだぞ!」
『横取り良くない!!』
せっかく翔陽君に用意したものを飛雄君に取られてしまった。もう!飛雄君、普段はこういう人じゃないのに。
「これ、貰うぞ」
『飲みたかったのなら最初に言ってよ〜。そんな急かなくてもいいのに!』
「わーってるっつの」
そう言いながらもう1本を取り出す。
『今度こそどうぞ〜』
「ありが、って月島!お前飲まねぇだろ!普段!」
なんと、あろう事か今度は月島君が持って行ってしまった。月島君が試合前に何か食べるという事はまずない。
「いいでしょ別に。…後で飲むし」
最近の飛雄君と月島君はどこか似ている。多分、今、2人のトレンドは横取りだ。そんなに私が物を渡すのが気にくわないんですか!!
もう、いじけちゃいます!!
_________
(日向と仲がいいひよこちゃんが気に食わなかった2人がいたり、いなかったり…)