「潔子さん荷物お持ちしますっっ」
試合後。
田中先輩と西谷先輩が勢いよく潔子先輩に話しかける。先ほどの勝利に興奮冷めやらぬ様子だ。
「もう大体持ってもらったから」
「おーい行くぞー」
「私、最後に忘れ物無いか見てから行くから、仁花ちゃんと名前ちゃんは先行ってて」
「ハイッス」
『はい!』
麗しい潔子先輩の言う通りに、帰る準備をする。階段を降りながら、他愛の無い雑談をする。すると、私の中にある不安がよぎった。
『あ、仁花ちゃん、そういえば救急箱ってバスに運んだ、よね』
「うん、確か…、運んだ、ハズ?なんか自信なくなってきたよ…!」
『ちょっと見てくる!』
来た道を走って戻り、私たちが休憩に使用していた場所へ向かう。多分、忘れ物を探してる潔子先輩がいるハズ。
「ね、番号教えてよ」
き、潔子先輩がナンパされてるるるるるううう!!ダメだ。なんたる失敗。そうだよ、潔子先輩1人で行動させちゃダメだったよ!何故ならばこうして麗しい潔子先輩をナンパする輩がいますから…!
でも、男2人に私は敵わない。田中先輩と西谷先輩がいれば対処できるんだろうけど、私が呼びに行っている間に誘拐されてしまえば堪らない。
『き、潔子せんぱーい、忘れ物ありましたか?』
平然を装ってそこへ近づく。
「名前ちゃん…!」
「何、この子も同じ高校なの?ちょうどいい、君の番号も教えてよ」
はあぁい?矛先がこちらに向いた!?想定外だった。明らかに珍獣を見る目である。そりゃ、潔子先輩に比べたら500倍くらい見劣りはしますが、その反応は傷つきます!おまけといわんばかりだ。
『えっと、117です!』
「え?よく分かんないけど、絶対違うよな」
えぇ違いますとも。時報ですもん。さぁあ、番号教えたので解放してください……。
「すみません。人が待ってるので」
「番号なんてすぐじゃん!」
潔子先輩が必死に対処するも、相手は聞く耳を持たない。そこへあらわれたのは
「ヘァーーーーーッ!」
奇声をあげた翔陽君でした。青ざめた顔をしながら助けてくれるその姿は、少し頼りないけど、逞しかった。
「すみませんっ!それ おれの弁当箱っ、いきましょう。さあ速やかに行きましょうっ!!」
「待て待て話の途中じゃんー」
『翔陽君!』
「日向!」
しつこいナンパ師さんに軽々と飛ばされた翔陽君。まだ、諦めていないのかこの人は…!!
「スマホ?あ、まだガラケー?」
「あのーーーっ!!!」
「!!?」
次の瞬間、翔陽君自慢のバネで大ジャンプをした。そのジャンプ力に完全にナンパ男さんはビビっている。
「しっ、清水先輩と名前ちゃんはウチの大事なマネージャーなのでっ、あのっそのっ」
「へぇ、お前らが倒したのか"2m"」
ナンパ師さんの興味の矛先が、完全に翔陽君のバネに向いた。しかしナンパ師さんは喋っても立っているだけでもチャラさが滲み出ている。
「あーあ、俺も2mと遊んでみたかったのにな」
「?遊ぶ?」
「試合はチョー!楽しい遊びだろ!」
何を言っているんだろうこの人は。確かにバレーは楽しくてなんぼだけど、ナンパ師さんが言っている意味は少しだけ違うような。
少し釈然としないまま、烏野のみんなが待つバスへ向かったのでした。