ひよこが駆け巡る!





夏休み終了から数日が経過した。

烏野高校排球部では、普通の練習終わりの自主練が始まろうとしていた。
そして私は、そのメンバーの中に飛雄君の姿が見当たらない事に気がついた。いつもなら積極的に参加するのになぁ。家の用事か何かで帰るのかな。

そんな事を思いながら、救急箱の足りない部品を整理する。あ、テーピング足りなくなってきたみたい。

「かっ、影山君どうしたの!?」

絆創膏の残量を確認していると、入り口付近から仁花ちゃんの驚いた声が響き渡った。

「分かるのか!?」

そして飛雄君の驚いた声も聞こえてきた。体育館の窓から外を見てみると、そこに全身黒い服で、マスクとサングラスをしている飛雄君を発見した。

「…まぁ」
「くそっ…!」
「も、もしかして変装のつもりだった…?」

飛雄君の変装はどこからどう見ても怪しかった。どこに行くとしても、夏には相応しくない格好。誰がどう見ても、まるで不審者である。私は自分の作業を一旦中断して、仁花ちゃんと飛雄君がいる場所へ駆け寄った。

『飛雄君、それじゃあ逆に目立っちゃうよ』
「…代表決定戦で当たるかもしれない相手でどうしても見ておきたいチームがあって…」


飛雄君はとても分かりやすいから、その‘相手’は大体想像がつく。きっと、彼がずっと意識しているあのチームなんだろうなぁ。更に、ピンポイントで彼の先輩を思い浮かべる。本当にライバル視してるんだなぁ。

『その格好じゃ怪しいかも…』
「じゃあどうすれば…」
『大体、飛雄君がどんな変装しても、私、見破る自信あるよ!』

きっと、変装していても身長とか、声とか、雰囲気とかで分かっちゃう。なんでかっていう明確な理由はないけど、なんとなく。

「(名前ちゃんって天然タラシなのかな)」

『でも、偵察に行くとしたら、普通の運動着の方がいいんじゃないかな?ね、仁花ちゃん』
「う、うん、どの学校でも放課後に一番目立たないためにはフツーの運動着が良いかと…」

そう言った瞬間、目から鱗とでもいうように、ポカンとした表情になった飛雄君。そんな考えには至らなかったらしい。初歩的と言えば初歩的なことではあるが、実に飛雄君らしい。

こうして普段着ている運動着に着替えて、飛雄君はバスに乗って旅立った。多分、及川さんのいる青葉城西高校へ。

暫くして帰ってきた飛雄君。

最初は及川さんに一生勝てないかもしれない、なんて弱音を吐いていたけど、その言葉の中には闘志が溢れていた。心配しなくても彼ならきっと大丈夫。

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