ひよこが駆け巡る!





8月末。

「え〜、10月の代表決定戦までの間で関東へ練習試合に来れるのは、今回も含め都合2回程です。貴重なチャンス有意義に使いましょう」


私たち烏野高校は、再び東京の地を訪れていた。メンバーはこの前の合宿の時と同じだ。今回の滞在時間は非常に短いので、短期集中型になる。

『木兎さん、お久しぶりです!全国行く前に会っちゃいましたね』
「名前!!元気だったかー!?」
『はい、このくらい元気です!!』

私は両手を精一杯広げて、元気度を示す。今日の私の元気は百倍だ。

「そうかそうか、俺はこーーんくらい元気だ!!」

木兎さんは私よりも長い手を広げる。どう考えても私より長い手を見て、負けを悟った。

『うわぁ。負けたぁ』
「はっはっは!!!」

木兎さんは高らかに笑う。そしてその隣には呆れた赤葦さんがため息をついていた。

「そもそも木兎さんと名前じゃあ腕のリーチが違うでしょう。大人げないですよ」
「なに!?」
『いいんです、赤葦さん。見ててください。』
「…?」

しかし、私には勝算があった。言わば奥の手というやつだ。

『月島君、ちょっといいかな?』
「なに?」
『私の前に立って』
「?」


彼は文句を言うこともなく、言われるがままに私の前に立ってくれた。そして、彼の腕を後ろから掴んで、思い切り広げた。身長も腕の長さも違うため、少し持つ腕が震える。

『私、このくらい元気です!!』

木兎さんよりも月島君の方が身長が高いしリーチが長いから、きっとこれで勝てただろう。木兎さんは再び腕を広げて、月島君と比べてみるけど、やはり月島君の方が少し長かった。


「うぉおおおおお!負けたぁぁぁ!」
「はは、そういうことか」
「なに、急に」
『木兎さんと私でどっちが元気か腕の長さで競ってたんだけどね、どうしても私だと負けちゃうから、月島君呼んじゃった』
「なにそれ」

私は勝ったのを確認してから月島君から離れる。まさに救世主。月島君なくしてはこの勝利はない。

『ありがとう!勝てた!』
「次はくだらないことで呼ばないでよね」
『それは無理だよ。呼びたいとき呼ぶよ』

なんだかんだいって最後まで付き合ってくれるのが月島君のいいところだ。

『呼んだら月島君来てくれるでしょう?』
「…時と場合による」
「ツッキー素直じゃねぇな!」
「あなたがド直球すぎるんです」
「俺だったら名前呼ばれたらすぐ行くぜーー!!!」
『私も!私もすぐ駆け付けます!』
「じゃあ競争だな!!」
『負けません!』
「それって二人一気に呼ばれないと競争になりませんよね」
「『あ』」


毎度毎度赤葦先輩のツッコミが的確すぎて何も言えなくなる。もしや、木兎さんとお笑いコンビを組んだら、テッペンをめざせるのでは!?


(君が僕を呼んでくれる限り、僕の身体は君に向く。

僕は君の言葉に弱い。でも、絶対言ってなんかやらない。負けを認めたみたいじゃないか)

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