日中に比べると比較的涼しいが、ムシムシした暑さは夜になっても続いている。
「ヘイツッキー!!今日もブロック跳んでくれ ヘイヘーイ!!」
「……」
「木兎、他校の1年に引かれるの巻」
練習試合が終わると、すぐさま月島君に向かって猛アタックする木兎さん。前回の合宿の時から随分と気に入られた様子だ。
「…ハイ、お願いします」
月島君は数秒の沈黙の後、彼の誘いに承諾した。あの月島君が、だ。今までの彼だったら考えられないような前向きな返事。本当に今の月島君はなんだか好きだ。まだ、バレーに対して探っている素振りもあるけど、少しずつ前向きに捉えるようになっている。私は何かに対して一生懸命向き合っている人がとても好きだ。
「!!?」
「自分で頼んどいて何びっくりしてるんですか」
まさかの承諾に、誘った側の木兎さんが一番驚愕している。月島君は確実にいい方向に変わっている。
『おぉ、月島君人気者―!』
「名前、ボール上げ頼む」
月島君の方を見て感心していると、後ろからお声がかかった。後ろには、ボールを抱えた飛雄君がいた。
『分かった、今行くね』
私が承諾をすると、飛雄君は足早に奥の方のコートに向かう。私は遅れないようにと、その背中を追う。
『最近さぁ、月島君すっごくいい感じだよね。』
「……。」
『どんどんバレーにハマっていってるっていうか、上手くなってるっていうか』
「……。」
『ん?飛雄君聞いてた?』
「…聞いてる」
一向に返事がなかったので問いかけてみると、話は聞いていてくれたらしい。まだ、月島君と飛雄君は犬猿の仲なのだろうか。最近はそうは見えないんだけど。しかし私が月島君の話題を振ると急に黙ることが多い。これは二人が仲良くなる道のりは相当長いとみた。
『あ、でも飛雄君のバレー好きにはまだ追いついてないね。飛雄君バレー大好きだもんね!』
「ボゲェ」
『え、理不尽!今のタイミングでいうこと?』
「ボゲェ、名前ボゲェ」
『扱いひどくない!?』
今のはさすがに扱いがひどい。大好きだもんねの返しがボゲェって全然会話になってないんですが。私何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
『ボゲェっていう方がボゲェだから!つまりどっちもボゲェだから!』
「なんだよその理屈」
馬鹿っていう方が馬鹿なんだからね、の理屈と同じだ。
『その話はもういいよ〜!ほらほら練習時間なくなっちゃう』
私は飛雄君からボールを受け取り、いつも飛雄君と自主練するときの定位置に向かう。
『今日は低めでいい?』
「おう」
セッターはあらゆるボールに対応しなければならない。どんな状況でもスパイカーが打ちやすいトスを出さなければならない。チームの司令塔であり、正確さが求められる重要なポジション。
私がボールを投げると、瞬時に反応した影山君がトスを上げる。
私は、彼が上げたその綺麗なトスに魅了されている。
(俺は、絶対真っすぐすぎるお前には一生敵わない)
***
「おーい、ツッキー、早くやるぞー!」
「…分かりました」
「なに、あっちになんかあんの?」
「いえ、…何も」