ひよこが駆け巡る!





『飛雄君にちょっとお願いがあるんですが』
「なんだよ」
『付き合ってほしいところがあって』
「?」

今回の練習試合は音駒高校で行われたのだが、荷物置き場に使っていた教室に忘れ物があることを思い出した。しかし日はすっかり暮れていて、とてもじゃないが一人でその忘れ物を取りにいけるような雰囲気ではなかった。端的に言えば、夜の学校、怖い。

そこで、その忘れ物を取りに行くのに着いて来てほしいと飛雄君にお願いしたわけだ。
先輩たちにお願いするわけにもいかないし、翔陽君は他校の人との話が盛り上がっているし、月島君はテーピングを巻いているし、山口君はどこかにいってしまったしで、頼める人は飛雄君しかいなくなっていたのだ。


『ごめんね、ちょっと夜の学校って怖くて』
「ビビり」
『そうですよ!ビビりですよ!だから飛雄君にお願いしたの!!』

ビビって何が悪い。じゃあ飛雄君は角から人体模型が飛び出して来たらどう責任をとってくれるんだ。

『そういえば飛雄君さ、あの後好きな人とはどうなったの?』

ずっと聞きたかった質問だった。あのバレー一筋飛雄君に好きな人がいるという事実は私にとってとても重要な問題だ。勿論月島君や翔陽君に好きな人がいるという事実が発覚したとしても重大な問題になるが、そういった話は聞かないので、今は気にしていない。それよりも今は目の前にいる飛雄君だ。

もし、バレー部員の誰かに好きな人や彼女がいたとしたら、今後の付き合いを考えなければならない。あまりにも距離が近いとその好きな人に誤解されてしまう可能性がある。いくらマネージャーと部員で距離が近いとはいえ、それを避けなければならない。

でも、誰に彼女ができたって寂しいな。あまり構ってくれなくなるのかな。と考える私は、私はなんて欲張りな人間だろう。

「は!?急になんだよ!!」
『恋バナだよ、恋バナ!そんなびっくりすることないじゃない』
「別になにもねーよ!」
『えー、実は奥手?』
「どうせ、何か言ったところで信じねぇだろ」
『何かって?』
「…好きだ、とか」

びっくりしたー!飛雄君が真っすぐ私を見てくるから、てっきり私に向けて言っているのかと思った。彼の不器用な口から出た気持ちが、思っていたよりもずっと真っすぐ私の中に届いた。


『え、今キュンってしたよ!そんな感じで言えば、相手の子も分かってくれるって』
「……。」
『あはは、顔真っ赤だよ』
「うるせー、もう言わねぇ!!!」

普段、愛の言葉とは無縁そうな彼の口から出た”好き”なら、相手にもきっとその気持ちがダイレクトに届くだろう。

(やっぱり気づかねぇ鈍感野郎)

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