ひよこが駆け巡る!





「じゃ、俺教室こっちだから」
『うん、また部活でね』


先輩の棟でアサヒ先輩と話してから、影山君と教室に戻る途中だった。翔陽君とは教室が違うため、途中で別れたが、影山君とは教室が同じため、二人で並んで廊下を歩く。

『ねぇ、影山君』
「なんだ」

私は教室に着く前にふとした疑問を問いかけてみることにした。

『影山君は好き?』
「は?」
『バレー。私は好きだよ』
「……あぁ。まぁ今はバレーさえできればいいと思ってる」

影山君らしい回答にホッとした。やっぱりそうこなくっちゃ。きっと翔陽君も全く同じように答えるだろう。二人がバレー好きじゃなかったら、誰がバレー好きを名乗ることができるだろうか。

彼らがバレーに青春を注ぐ姿が好き。煌き飛び散る汗が好き。時折見せる上手くプレー出来た時の表情が好き。ちょっと変かもしれないけど、うまくいかなくて悔しそうな顔をしているのも好き。

結局、私は二人のプレーに魅了されている。


きっとアサヒ先輩もバレーはまだ好きだと思う。原因はよく分からないが、バレーのことで悩んでいるということだけは分かっているつもりだ。一時期のトラウマで投げ出したくなる時は何度もあると思う。でもアサヒ先輩の瞳が、表情が、まだバレーをやりたいと叫んでいた。スパイクを打ちたい…、バレーをやりたい。彼の悲痛な心の声が聞こえた気がした。


『ふふ、そうだよね。』
「なんだよ急に」
『うわっ、いひゃいって!』

最近、影山君に頬を引っ張られることが多くなった。頬を触っている本人は特に表情を変えずに、ただひたすら私の頬を引っ張る。

「よく伸びるな、お前の頬」
『やみぇてー』
「おーおーどこまで伸びるんだ」
『痛い…』

限度と言うものを知らないのだろうか。きっと頬っぺたは真っ赤っか。ようやく離してくれた熱をもった頬に両手を添える。

『だいたい、私はお前じゃなくて名前!ちゃんとした名前があるんだけど!』
「……お前はお前だろ」
『でも、お前呼びはちょっと悲しいよー』

泣き真似をして見せると、意外なことに影山君が怯んでいる。そういえば女の子と話してるところあまり見たことないし、さては、女の子の涙に弱いな?このまま泣き真似を続ければお前呼びから昇格できそう。私は演技を続行して見ることにした。

『…名前って呼んでくれないの?』
「……な、名前。」
『初めて名前で呼んでくれたね!』
「……うるせぇ!お前が呼べって言ったんだろーが!」
『またお前…』

今までは苗字とかお前呼びだったから、名前呼びがちょっと照れ臭かったことは秘密だ。

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