「あっしたーもー♪早起き〜」
昼休み、廊下で擦れ違ったオレンジ天パの男の子が能天気に歌っていた。たしか、影山君のお友達……、あの様子だとお友達じゃないか。とはいっても影山君が一方的に喧嘩を売っているように見えたが、実際は分からない。
彼はバレー部(仮)一年生の日向翔陽君だ。
『あ、あの!』
「え、うぇ、俺!?」
『はい、貴方です!』
私はこれから仲間になる予定の日向翔陽君に話しかける決断をした。そうして話しかけた声は、自分が思っていたよりも大きくて、自分で驚いてしまったことは秘密だ。
『えっと…、翔陽君!』
「え、なんで俺の名前……」
『私、男子バレー部のマネージャーになったし、同い年だから、翔陽君の事は知ってるよ』
「うおぉ、そっかそっか!だから俺の名前知ってるのか!」
『これから同じ仲間としてよろしくね』
「こちらこそよろしく!」
ニコリと笑った顔は翔陽君の純粋さを体で表している。すごく親しみやすい人だ。何故か自然に名前で呼べちゃうし、敬語なしですんなりと話ができた。
あまり人を寄せ付けなそうな影山君とは正反対の性格みたいだけど、彼とは上手くコミュニケーションとれてるのかな?
『そういえば、明日も早起きってどういうこと?』
「あぁ、それ!土曜日に部内で三対三があるでしょ?その日のために早朝は秘密の特訓してんだ!」
自慢げに語る翔陽君は本当にバレーを楽しんでやっているのだと感じた。
『なるほど…。頑張ってるんだねぇ……。』
「おうっ!」
「おい日向アホ。行くぞ」
ほのぼのと日向君と話していると、彼の頭に影山君の拳骨が乗っかった。同時に翔陽君は顔を歪めて頭を両手で抑えた。とても痛そうな音がした。
「痛ってーな!言われなくたって行くし!」
『翔陽君、大丈夫?』
私は翔陽君の元に駆け寄って一緒に頭を抑えた。そして、思いを込めてさする。流石に今のは痛そうだったなぁ。それよりも顔面にスパイクを受けた方が痛そうだけど。私は一回中学の体育のバレーで顔面スパイクを受けたことがあるんだけど、あれは悶絶ものだ。それに痛みがしばらく続くから、もう二度と体験したくない。
「あ、えっ、…名前ちゃん?」
『はい?』
「もう、大丈夫だから。そ、その、ありがとう」
『あっ、ごめんねっ!』
翔陽君は顔を背けて、顔を抑えてしまった。
私としたことが、今日初対面の人にいきなりスキンシップをとられるなんて嫌だよね。
次からは気をつけないと。
(女の子の顔あんなに近いの初めてだーーーー!)