練習試合が始まる前に、猫又監督と直井コーチに挨拶してきたから、後は主将である黒尾さんに挨拶するだけだった。
『黒尾さん、短い間ですが、お、お世話になります。』
私はガチンゴチンの状態で、アップを終えた黒尾さんに話しかける。今の挨拶としておかしかったかもしれないが、もはや気にしてはいられない。
「お、ヨロシクー。おい、皆集まれ」
「「「うす!」」」
ヒェーーーー!も、物凄い圧力。私より何十センチも大きい音駒選手団の皆様に見事に囲まれました。まさに巨人の中に放り込まれた小人のような気分になる。
「彼女は、今日一日だけ俺たちの臨時マネージャーになってくれた烏野のマネちゃんだ。迷惑かけんなよ」
「キミ、名前は?」
一人だけ色の違うユニフォームを着た短髪の人が私に話しかけてくる。えと、つまりリベロの人だよね。
『烏野高校一年の苗字名前といいまひゅ。いいまひゅ!?』
自分で噛んでおいて、自分でツッコんでしまった。なんか黒尾さんクスクス笑ってるし、名前を聞いてくれたリベロの方も笑いを堪えているような。唯一笑ってないのはプリンみたいな頭をしているあの人だけだ。猫目で、さっきからあまり喋っていない。無口な人なんだろうか。
確か、朝、翔陽君と話していた研磨さん?と言っただろうか。彼のポジションはどこなんだろう。アップを見た感じだとセッターっぽい。
そしてその研磨さんの隣には、朝話しかけてくれた犬岡さんがいた。今すごく視線が交わってる。
『犬岡さん、さっきぶりですね』
名前を噛んだ恥ずかしさを紛らわせるように、犬岡さんに話しかける。
「な、な、名前ちゃん!その、今日はよ、ヨロシク!」
『はい、ヨロシクです!』
あれ、さっき犬岡さん敬語じゃなかった?もしかして同い年?どうりで親近感が湧くわけだ。
試合前のアップを見ていたけど、パワーもあってとても元気なプレイヤーだと感じた。しかし、年長者の貫禄のようなものはなくて、これからグングン伸びていく、発展途上という感じがした。どことなくプレースタイルが翔陽君のものと似ている気がする。
『犬岡さんってなんかこう、ブワーって感じでパワフルですね』
「そ、そう?名前ちゃんはピカーって感じで元気だよね」
『それを言ったら犬岡さんこそギラッてしてて……』
「なぁ、夜久…。あいつらなんの会話してんだ」
「さ、さぁ。」
犬岡さんと思いのほか会話が噛み合う。プレーもそうだけど、性格も音駒版翔陽君みたいな人だ。
「ドリンクは籠の中に入ってるから、休憩とかインターバルになったら配ってくれるとありがたいかな」
『もちろん任せてください!』
「あ、タメだし全然敬語じゃなくていいから!」
『そっかタメです、もんね。あはは、急に敬語外そうとすると難しい、ね』
この短期間で犬岡君とはかなり意気投合した。東京の人に知り合いができたなんて少しかっこよくない!?
(なんだあの、音駒の7番…!名前ちゃんと近い!!)
(日向がそんなこと言うなんて珍しいな)
(で、でも田中先輩!めちゃくちゃ楽しそうに話してますよ…!)
(ほぅ、日向お前……。)
(なんの話してるか分かんないけど、俺も混ざりたい!)
(そっちかよ!!)