ひよこが駆け巡る!





試合は三試合行われた。そしてその三試合全て音駒高校が勝利した。烏野は音駒とはいい試合をするんだけど、リードする展開にはならなかった。

そういえば今日は、私は烏野とは反対側のコートにいたから、いつもは見ることができない光景を見ることができた。コートの向こう側でプレーする烏野の選手がとても新鮮だった。相手はあの二人のコンビ(翔陽君と影山君)をこういう感じで見てるんだ。確かに敵だった場合は相当手ごわく、厄介なコンビかもしれない。スコアをつけていてそう感じた。

でも、そのコンビは途中で機能しなくなっていった。犬岡君の反射神経によって何度も二人の動きを封じられたのである。犬岡君のポテンシャルはとにかくすごいの一言に尽きる。

あと夜久さんと言うリベロの方がボールを繋いでくれるお陰で、床にボールが落ちることはあまりなかった。うちの西谷先輩も凄いけど、この夜久さんも凄い。

黒尾さんは主将ということもあってとてもいい仕事をしていた。まずプレーがしなやかで、なめらか。でもスパイクは豪快だった。攻守どちらも洗練された人だ。

そして、私が1番魅入ったのは研磨さんのセッターとしての仕事だ。無駄な動きがないし、何より正確。同じセッターだとしても、影山君や菅原先輩とまったく役割や仕事の仕方が違う。黒尾さんが研磨さんを脳だと表現したのも納得がいく。紛れもない、彼はチームには欠かせない司令塔だ。

完成されたチームってこの音駒高校の事を言うんだ。

『皆さん、お疲れ様です!』
「おう、サンキュ」

ベンチに帰ってきた選手の皆さんにタオルとドリンクを配る。多分私は皆を羨望の眼差しで見ていると思う。彼らは今の烏野に足りないものを沢山教えてくれた。

音駒の選手の皆さんは当然のことながら勝てて嬉しそう。そう、ただ一人を除いて。

『研磨さん』
「…なんで俺の名前」
『翔陽君から聞きました!研磨さんは今日勝ててどう思いました?』

研磨さんは一勝しても嬉しそうにはしていなかった。寧ろ勝っても負けてもいいみたいな振る舞いだったから少し気になってしまった。

「どうって…、普通かな…。」
『そうですか…。で、でも今度はうちが勝って、研磨さんに悔しいとか面白かったとかいろんな感想言わせてみせ、…ます!』
「…楽しみにしとく」

無表情だった研磨さんが微かに笑った気がした。

まさか後に翔陽君も私と同じことをいうなんて思いもしなかった。

(翔陽、さっき名前も同じこと言ってた)
(えぇ!?そうなの?)

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