私たちは若利君についての話が意外と盛り上がっていた。
「影山こんな奴居るトコ行こうとしてたんだなァ」
「そんでアレだろ。超高校級エースに向かって"もっと早く動けヘタクソ!!"とか言っちゃうんだろ??」
『言うんだ!』
「言いませんよ!」
仮にそんな暴言を吐かれたとしても、若利君はそれこそ全く反応を示さないだろう。そういえば小さいころから天然さんだった。
「…これを倒さないと音駒とは戦えない」
『でも、まだ強いところいっぱいあるんじゃないかな?』
「コラコラ、白鳥沢だけが強敵じゃねーぞ」
いつの間にか背後にいた烏養コーチが会話の中に入ってきた。さすがに敵は白鳥沢だけというわけにはいかないだろう。それまでにもっと厳しい道のりがあるはずだ。
「他は去年のベスト4とかスか…?」
「4強も勿論だが…、今年は他にも強敵が居る。そうだな…まずは_」
コーチはポケットの中から紙を取り出して、ゴソゴソと調べ始める。おぉ、今年の強豪チームを調べてきてくれているんですね!!とても頼もしいです。
「守りと連携に優れた"和久谷南"高さはそれ程でもないが、レベルの高いレシーブでとにかく拾って繋ぐ」
大会で当たるか分からないけど、一応頭の中にインプットしておかないと。
「去年から主力だった中島猛が3年になってチームの完成度が一段と増している」
本当よく調べてくれてるなぁ。お店の方も忙しいでしょうに。
「_あとは、今言った"和久南"とは別のタイプで守りの堅いチーム…"鉄壁"の一言に尽きる_"伊達工業"。どこよりも高いブロックを誇るチームだ」
「!………」
何人かの先輩の視線がアサヒ先輩に向いて、アサヒ先輩も神妙な顔つきになった。アサヒ先輩に精神的なダメージを与えたのは、きっとこの高校だ。野生の感が疼いた!
その伊達工業とは一回戦から当たる可能性があるようだ。これは気を引き締めていかなければなりませんね。
「そんで次。あぁ…こことは一回やってるか」
烏養コーチが次の紙を調べ始める。
「…セッターながら攻撃力でもチーム1。勿論セッターとしても優秀。恐らく総合力では県内トップ選手の_…及川徹率いる"青葉城西"」
あ、ラッキョウさんのところだ。苗字は確か金田一君。ラッキョウのイメージが強すぎて、肝心の名前を忘れるところだった。あとはツンツンさんと及川さんがいるチームだ。
「青城は去年のベスト4だな」
「ッチ…!」
出ました田中先輩の迫力満点の舌打ち。恐らくお兄ちゃんこと及川さんに向けての舌打ちだろう。田中先輩はモテキラ(モテモテキラキラ)な及川さんに強い嫌悪を抱いている。溢れる憎悪のオーラが田中先輩の怖さを引き立てている。
「大王様……!」
『大王様って……?』
「影山の先輩だから大王様!」
『それって、あの及川さんの事?』
「そう、そう!」
王様の上の位は、翔陽君の頭の中では大王様になっているらしい。確かに、ずぶの素人の私から見ても、バレー上手だったもんなー。というかやはり3年生の方々は、新人の1年生に比べて経験値が全く違うから、全体的に安定したプレーをしているイメージがある。こなしてきた練習の量は明らかに違う。
「あとは言わずもがな_超高校級エース牛島若利擁する王者白鳥沢」
本当よく調べ抜かれたデータだと思う。烏養コーチ、本当に私たちのことを本気で考えてくれてるんだなぁ。そう考えて嬉しくなるのと同時に、私はつくづく勉強不足だと感じる。私にできることはもっともっとあるはずだ。
「そう言えば、俺と西谷が戻る前に青葉城西に勝ってるんだよな?」
アサヒ先輩がそう問いかけてくる。事実上そうなっているが、それはあの及川さんが抜けている状態でやったものだから、それが青葉城西の本当の実力とは言えない。しっかし、あの及川さんのジャンプサーブは怖かった。あんなの試合で打たれたら一溜まりもない。殺人サーブと言っても過言ではないだろう。
私なんかが狙われたら、顔面バーンだ。おぅ、考えただけで恐ろしや。
『怖っ!』
「なにが!?」
つい思ったことを口に出したら、菅原先輩にすかさずツッコまれた。