ひよこが駆け巡る!





急な話ですが、私は今青葉城西高校に向かっています。
これには深いわけがありまして…。

実は私はもともと今の家に住んでいたわけではなく、白鳥沢中等部近くにあった父方の実家に住んでいた。高校に上がるのと同時に父の転勤が決まり、仕事場から近いほうが何かと便利ということで今の家に引っ越してきたのだ。

その前の家の隣の家には同い年の男の子が住んでいた。彼とは小学校の頃からの付き合いだが、今年から青城高校野球部に入部したと聞いた。今回はそんな彼に関する用事があって青城高校に向かっているというわけだ。

烏野高校での午前練習を終えた私が、お母さんから頼まれていた用事があり、前の家(現在は私のおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる)に向かうと、困った様子のお隣の彼の母親が玄関先に立っていた。

『あ、お久しぶりです』
「あら、名前ちゃん!久しぶりね!元気だった?」
『はいとっても元気です。ところでどうしたんですか?』
「あの子ったら、今日練習あるって言ってたんだけど、練習着置いて行っちゃって…。ほんとバカね」
『もう練習始まってますかね…?』
「今日は補習受けてからだから、午後練らしいの。でも、私、今から家にお客さんがくるから届けられないのよー。」


頬に手を当てて悩んでいるお隣の母親の顔を見て、助けない理由が見当たらない。ここはお隣のよしみで届けに行ってあげないと。


『あの!もしよければ私が届けに行きますよ?』
「あら、でも青葉城西高校の行き方分かる?」
『前に一度だけ練習試合で行ったことがあります』
「本当?ありがとう。全くあの子は…、名前ちゃんがいないとダメね」

うふふ、とため息をつきながら笑うお隣のお母さんは愛嬌がある。昔よくしてもらったし、私も少しでも役に立ちたい。

『ふふ、それじゃあ、届けて来ます!』
「気をつけてね、本当にありがとう!」


私のお隣さんは、どこか抜けていて結構大事なものを平気で忘れて行く癖がある。小さい頃からの難癖だ。中学校の頃、彼は朝練で私よりも早く登校していたため、彼が何かを忘れたとき、それを届ける役目はいつも私に任されていた。

今回も無事私が忘れ物を届けて、お隣さんを安心させよう。なんだか中学校に戻ったみたいで懐かしいな。


私は家にいたおばあちゃんに一言声をかけてから、青葉城西に向けて足を踏み出した。

そう、これは一日だけの青葉城西探検物語(かもしれない)

私は、無事に彼に練習着を届けられるのか。

そしてなんのトラブルもなく、帰ってこられるのか。

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