ひよこが駆け巡る!






練習試合以来の二度目の校舎でも、やはりまだ新鮮だ。青城高校は私立高校のため、設備は整っている。

校門前で深く深呼吸をして、校内へと足を踏み入れた。

野球場の場所を確認しながらぎこちなく進んでいくと、やはり生徒達からは"おまっ、誰やねん!"みたいな視線をおくられる。確かに、青城高校と全く関係のないジャージを着ている小娘がウロチョロしていて、不審に思うのも無理はない。少しいたたまれない気持ちになりながらも、痛々しい視線を掻い潜りながら進むと、立派なグラウンドが見えてきた。ようやく届けられる…!


球場には何人かの野球部員がいた。果たしてこの練習着をどうやって渡したらいいだろうか。と悩んでいると、二人の野球部員が雑談をしながら私の目の前を通り過ぎようとしていた。これはチャンスだ、と確信して、思い切って声をかけることにした。

『スミマセン!この野球部に佐柄木はいますか?』
「佐柄木…?あぁ、いるよ。呼んでくる?」
『お願いします!』

第一関門突破。まずはお隣さんの存在を確認し、呼び出すことに成功!佐柄木という苗字は全国的にも珍しいらしく、この苗字を言うと一発で誰かが分かってしまう魔法の苗字だ。

しばらくすると、焦って走ってきたお隣さんが私を見て、驚いていた。中学の卒業式以来3か月ぶりの再会だ。


「名前!?もしかして練習着届けに来てくれた?」

さすがお隣さんと言ったところだ。なんの要件でここに来たか、すぐに理解したようだ。

『うん!まったく、お母さん困らせちゃダメでしょ!』
「わりぃわりぃ、スッカリ忘れてたわ」
『あはは、相変わらずおっちょこちょいだねぇ』
「お前に言われたかねぇよ!」
『イダッ!』

お隣さんに頭をグリグリされて、痛い目をみた。力の加減を知らないなコイツ。しかし反撃もできないので、されるがままにするしかない。これが、練習着を届けに来てあげたお隣さんへの態度ですか!


「ちょっとちょっとーあんまりヒヨコちゃんイジメないでよー」
『わわっ!及川さん!』

声が聞こえたのと同時に、私の体は宙に浮いていた。それもそのはず、及川さんが私を軽々と持ち上げたからだ。

「そうだよ、及川さんだよー。元気にしてた?ヒヨコちゃん」
『それはもう元気です!けど…降ろしてくれませんか?』
「んー?どうしようかなー?」
『私重いですからー』
「じゃあ、下ろしてあげる代わりにまたお兄ちゃんって呼んでよ」
『お願いしますっ、お兄ちゃん!』
「………やっぱいいね!」

お兄ちゃんと呼んだにも関わらず、及川さんは暫くの間下ろしてくれませんでした。


約束と違います!!

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