ひよこが駆け巡る!





ようやく及川さんは開放してくれ、地に足をつくことができた。最近色々な人に子ども扱いされることが多いが、私はれっきとした高校一年生だ。

「名前、及川さんと知り合いなのかよっ!?」
『うん』

焦った様子のお隣さんは、及川さんに聞こえないレベルの小声で私に話しかけてくる。彼の疑問に正直に答えると、私をお化け扱いするような目で見てきた。そんなに及川さんと知り合いなのが凄いことなのだろうか。

「そう言えば、この前うちと練習試合したって母さんから聞いたわ。あ、そうだ、練習着ありがとな」
『いいよいいよ!練習頑張ってねー』
「おう」

練習着を受け取ったお隣さんが、風のように去って行った。昔から足だけは速かった。

「ヒヨコちゃん、今の男子とはどんな関係なの?」
『お隣さんです』
「へぇー、それで練習着届けに来たってワケか…イダッ!」
『だ、大丈夫ですか!?』
「ヘラヘラ笑ってんじゃねぇクソ川。もう練習始まるぞ」
「痛いってばー、岩ちゃん!」

颯爽とツンツン頭の人が登場。この前大変お世話になった岩ちゃんさんだ。さきほど及川さんの後頭部にバレーボールを放ったのは間違いなくこの人だ。もうどっちがキャプテンか分からないくらい、ツンツン頭さんのほうがしっかりしてる。

『あの、私、そろそろ帰りますね』


元々長居する気なかったし、バレー部もこれから部活が始まるみたいだし、今日の私の任務は無事に終わったことだからそろそろ帰ろう。

「えぇー、練習見ていかないの?」
『もともと長居する予定がなかったので、今日は帰ります』
「全然、見ていってもいいんだよ??」
『い、いえいえ、他の方に迷惑がかかってしまうので、また今度…』

なかなか引き下がってくれない及川さん。そしてそれを怪訝な顔で見守るツンツンさん。

「しつこいと嫌われんぞ」
「だって、だってー」
「だってじゃねえよ!」
「イダイッ!なんか威力増してない!?」
『本当にお二人は仲がいいんですね!』

クスクスと笑うと、二人の動きがピタリと止まった。止まるタイミングまで息ぴったり。こういうのを確か阿吽の呼吸っていうんだよね。

「誰がこんな奴と…」
「岩ちゃんったらー、照れちゃってー!」
「照れてねーよ!黙れクソ川」
「イダッ!何も本気で蹴ることないでしょ!?」

私と幼なじみでさえこんなに仲は良くない。私たちは及川さん達ほど息がぴったりではない。それに私たちの場合は男女だから、二人ほど親密には慣れなかった。

それに比べて二人はすごく息が合うんだなぁ。いいなぁ。

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