あのあと全力で田中先輩に謝られたが田中先輩は何一つ悪くない。耐性が全くなかった私が悪いのだ。
結局”男子なんだからこんな格好するのも当たり前だ!”と自己解決したから田中先輩と私の間のギクシャクはなくなって、また普通の生活が戻ってきた。
そして、今日も部活が終わった。部活帰りに澤村先輩が肉まんを奢ってくれるらしい。
でも、潔子先輩は部活を終えた後早めに帰ったし、何故か山口君もいない。みんなで肉まん食べたい気持ちもあるが、潔子先輩もいないし、澤村先輩のお財布が泣くのも嫌だし、私も早めに帰ろう。
『先輩、私も先に帰りますね。お先に失礼します』
「おぉ!?名前ちゃんも来ねぇの!?」
『ごめんね、翔陽君…!明日お話いっぱい聞かせて!』
「おぅ!」
『じゃあまた明日ねー』
私はいくつもの教科書が入った重いリュックをギュッと握りしめた。すると、月島君と目があった。
「ヒヨコ帰るの?」
『うん、今日はちょっと早めに』
「ふぅん。ま、それもそうか。ヒヨコはまだお子様だから早く寝なきゃいけないしね」
『そうなのー。それに沢山寝なきゃ大きくなれないもんね!』
いっぱい寝ているのに大きくならないのは、きっと体のメカニズムがおかしいせいだ。人より睡眠時間は長い方なのにどうしても大きくならない。まぁ、身長は遺伝によるものも多いだろうし、両親ともに平均身長である私に望みはほぼない。
『今日はもっと早く寝てみる!』
「……そういう問題じゃないと思うけど」
『えぇ、そういうことじゃない?……身長って難しいね』
「ほら、さっさと帰りなよ」
『うん!じゃーね』
「………バイバイ」
月島君がさよならをしてくれたので、私は必死に手を振った。ルンルン気分で帰路に着くと、何やらを持った潔子先輩を発見した。楽しく帰っているうちに追い付いたらしい。先輩が手に持っているのは黒い布のような何かだった。
私は全力疾走をして前を歩いていた潔子先輩に追い付く。
『潔子先輩、待ってください〜!』
「あれ、名前ちゃん、どうしたの?」
『…ゼェ…ハァ……。何を、持ってるんです、か?』
だから私は体力なさすぎでしょ!たった100m程走っただけなのに、もうこんなに息が荒くなってる。やっぱ運動部に所属している人はすごいなぁ。
「これ、掃除してたら偶然見つかったの」
潔子先輩は私に端を持つように言って、言われるがままに布の端を持つ。それを広げたら、"飛べ"と書かれた横断幕だということが分かった。部室を整理していたら見つかったらしい。烏野らしい漆黒の横断幕。
この横断幕が試合本番で飾られる日もそう遠くないのかもしれない。