今日の早朝練でとてもいいものを見せてもらった。
素敵な翔陽君のスパイクは見られなかったけど、影山君の綺麗なトス見ることができたし、これから同じ時を過ごしていくチームメイトの優しさを痛感することができた。
これから、見るのが一段と楽しみになる早朝練習だった。
あの後、一旦家に帰って制服に着替え直してきた。
そしてまた登校。
2度目の同じ景色は早朝とはまた違った色を見せていた。なんといっても今は人通りがある。
『ぐへ…!』
「あ、いたんだ。」
人通りがあるのは良かったんだけど、それが仇となって人にぶつかってしまった。しかも超絶身長の高いお兄さんに。それはまさしく知り合いの月島君だった。月島君は大きなヘッドホンを装備している。
実は喋るのは今回が初めてじゃない。確かちょっと前に入学式で会話を交わした。『緊張しますね』「…別に」というようなたわいもない会話だ。その時、敬語で話しかけたら気持ち悪がられたので、今は砕けた話し方になっている。そう言えば、影山君も敬語嫌がったよなぁ。
『ごめんね、大丈夫?』
「なんで君が謝るの」
『だって、私が余所見してたからぶつかったんだよね?』
「……。ハァ」
なんでため息つくの!出かけた言葉を飲み込む。
そんなに嫌な思いをさせてしまっただろうか。もしかして、私はぶつかっただけではなく、もっと大変なことをやらかしてしまったのだろうか。例えば思い切り足を踏んでしまったとか。
「ヒヨコ」
『(………ヒヨコ?)』
「僕は君が小さすぎて見えなかったからぶつかっただけ」
『…うぅ、やっぱり。やっぱりそう思う?』
「…………は?」
『やっぱり私他の子に比べたら小さいよねぇ』
月島君にはっきり言われて思い直した。認めたくないけど私はやっぱり小さいんだぁぁ…!平均身長は分からないが、少なくとも背の順は一番前でも二番目でもない。だから自分では小さいつもりは更々なかったけど、こうして面と向かって言われるとやはりショックだ。
『でもね、毎日牛乳飲んだりいっぱい食べたりしたんだけどダメだったんだ』
「別にそんな事聞いてないし」
『え、そういうことじゃないの?』
「…ヒヨコといるとなんか疲れる」
『ご、ごめん!すぐあっち行くから』
やっぱり私は月島君にとんでもない失礼をしてしまったようだ。原因は不明だが申し訳ないことをした。
「いや、別にそんな意味で言ったんじゃないし…」
それじゃあどういう意味で言ったんだろう。いや、ちょっと待て私ちょっとウザいかな。
「兎に角ヒヨコは悪いことしてないんだし、謝る必要ないって事」
『そっかー、じゃあ、ありがとう』
「…ワケ分からないんだけど」
なんだ、月島くんを怒らせたわけじゃなかったんだね。心は一先ず落ち着いた。しかし、私はいつからヒヨコになったんでしょう。
「あ、ツッキーだ!おはよー!」
「山口か」
「山口かってなんだよー!」
なんと、山口さんという元気いっぱいの人が月島君に挨拶をしたではないか。この様子だと、山口さんとやらは相当月島君のことを好きな様子。月島君の方は…、私の時と反応は変わっていない。
「あれ?ツッキーこの子は?」
「ヒヨコ」
『い、いえ、苗字名前です!』
間違った紹介をされたままではいけないと思い、急いで訂正する。ヒヨコって、さっきも思ったけど私はいつからヒヨコって言われてたかな?
「苗字ちゃんかー!俺山口忠、ヨロシク!」
『…山口君ですね!よろしくお願いします!』
「敬語で話さなくてもいいよ!」
『いい、の?』
「うんうん、そっちの方が断然いいから!」
山口君から翔陽君に似た雰囲気を感じる。けど、また翔陽君とは違った雰囲気もある。山口君の方が柔和で大人しめだ。
「んで、話は終わった?」
「あぁ、ごめんツッキー!じゃあ行こう」
山口君との会話が弾んだせいで道に立ち止まっていたので、月島君がまだ進まないのかとイライラしていた。その様子を感じ取った山口君は、二人で先に歩いて行ってしまった。仲いいんだなぁ。
そんな2人に混じって登校するのも図々しいと思ったので、私は一旦距離を置いた。
そうして二人の背中が見えなくなるまで見送った。
とっても仲がいい二人なんだなぁ。