その日の放課後。
部活に向かった私はとても緊張していた。
今まで話した先輩方は潔子先輩と澤村先輩、そして今日新たに話した田中先輩と菅原先輩だ。一年生は影山君と翔陽君だ。
あと他の先輩方や、入部する予定だという新入部員とは一度も話したことがない。翔陽君と影山君の名前は知ってるけど、後の二人は…誰だったかな。相手がどういう人か分からないという緊張感がある。
『お願いします!!』
礼をして体育館に入る。あぁ、緊張します…!
私は大きく唾を飲み込んで深呼吸を繰り返した。
「来た来たぁぁ、名前ちゃん!」
田中先輩がいつも通りのハイテンションで私に話しかけてくれる。
『頑張ってください、田中先輩!』
「うおぉぉぉおぉ!田中"先輩"………!いい響きだぁぁ!」
「うるさいぞ、田中」
田中先輩はいきなり着ていたTシャツを脱ぎ出した。それもの凄い勢いで。ギネス記録いけてしまうんじゃ…!?とか意外と呑気な事を考えてみる。いや、何のギネス記録かは分からないけど。
「名前ちゃん、こっちに来て。体育館倉庫の部品を説明するから」
『はい!』
大好きな潔子先輩に呼ばれて、素早く反応する。そして獅子の如く先輩の元へ向かう。
「本当、苗字は清水が好きだよな」
「そうだな。かなり清水に懐いちゃってるみたいだし」
なんて澤村先輩と菅原先輩の会話が聞こえてきたけど気にしないでおこう。だって紛れもない事実なのだから。
「なんだかんだで清水の方も苗字の事気に入っているしな」
そ、それは本当ですか!?嬉しさのあまり思わず返事をしそうになった。それが事実だったら幸せすぎますね。
先輩たちの話を受け流しつつも、潔子先輩の元に辿り着いた私は、彼女の前で立ち止まる。すっと伸びてきた彼女の手の行く末を見守ると、その手は私の頭に辿り着いた。
「ふふ、緊張しすぎ。もっとリラックスしていいんだよ」
潔子先輩に頭を撫でてもらった挙句に、こんな言葉をかけてもらえるなんて。貴方はナイチンゲールですか。部員の皆さんを癒すだけではなく、私まで癒していただけるなんぞ…。
『はい!』
この行動のおかげで緊張の糸がプツリと途絶えて、平常心に戻った。恐るべし潔子先輩パワー…。あまりの嬉しさに私の顔は緩み切っていることだろう。今鏡を見たら確実にだらしない顔をしているだろう。
性格もよくてお顔も素敵で、みんなから慕われている潔子先輩と一緒に部活動ができるなんて、私は前世で一体どれくらいの徳を積んだのだろうか。
潔子先輩、一生ついて行きます!
(名前ちゃん、妹にしたい…)