ひよこが駆け巡る!





烏野高校から大会会場である体育館までは結構遠くて、みんなマイクロバスで移動して行くことになった。


『翔陽君、今日は大丈夫?』

乗る前に翔陽君の体調を確認する。青城に練習試合に行った時みたいに吐かれては困る。翔陽君は健康でなくっちゃ、試合で思う存分暴れてもらえない。

「大丈夫だ、名前ちゃん。今日は日向がいつでも吐けるように袋を持って来たからな!」
『田中先輩、さすが準備がいいです!』
「お、俺多分吐かない、よ!」
『いざとなったらちゃんと私が介抱するから、任せてね』
「あれ、なんかクラクラする…。」
『田中先輩!?大丈夫ですか?』

田中先輩がちょっとフラついたので、後ろから体を支えた。そんなに体重はかかっていないので、腕力がなくとも支えられるくらい。田中先輩まで不調になったら、試合に影響してしまう。


「一瞬、俺の元にナイチンゲールが見えた…。」
「何やってんだ龍。早く行くぞ」
「ノヤっさん…!せっかくイイトコだったのに…!」
「お前だけにいい思いさせてらんねーよ!」
『田中先輩、あまり無理しないでくださいね?』

西谷先輩の言葉を聞いて、田中先輩は一瞬にしてピンピンし始めた。やはり田中先輩は元気が一番に決まっている。

「…俺のエンジェルぅぅぅ」
「やっぱエンジェルだな!」

西谷先輩と田中先輩が噛みしめるようにそう呟いた。もし私のことを言っているんだとしたら、エンジェルだなんてそんな恥ずかしい…。

「忘れ物ない!?それじゃあ出発するよ?」
「お願いしまーす!!」
「「「しァーす!」」」
「それじゃあバスに乗るぞ」

バスの席順は、基本主将副主将が前で、あとは自由だ。だから私は潔子先輩の隣にお邪魔することになった。

『潔子先輩……、き、きき、き緊張しますね…!』
「ふふ、まず落ち着いて。皆に緊張移っちゃうから」
『はい、落ち着きます!』

平常心、平常心…!

せっかく潔子先輩に宥めてもらったのに、私は会場に着くまでの間、太ももが震えっぱなしだった。そんな私を見かねた潔子先輩が私の手をぎゅっと握ってくれたことは一生忘れない。

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