ひよこが駆け巡る!





試合会場のコートに向かって、集団で通路を歩いていると

「おい、アレ見ろ!かわいっ」

何っ!?
かわいっ、と言った他校の選手の視線は潔子先輩に向いていた。そして目が完全にハートになっている。

「かんわいっ!」
「声かけてみろよ」

やっぱり潔子先輩の麗しさは万国共通。潔子先輩は罪なおヒトだ…。その言葉に反応した田中先輩と西谷先輩はしっかり潔子先輩ガードに行った。頼みます、先輩方!


「……なぁ、烏野にマネージャー2人いたっけ?」
「さぁ、でもあの子。なんか小動物みたいで可愛くね?」
「言われてみれば…一年生かな。うん、俺のタイプだ」
「話しかけるか?」

別の方でそんな会話がされていることは名前は知らない。その会話を聞いてしまった影山と月島は顔を顰めながら、さり気なく名前の近くに行く。影山が左、月島が名前の右に立って歩き始める。

『影山君と月島君、今日は近いねぇ』
「気のせいだろ」
「好き好んで王様の近くに居るわけじゃない」

2人は名前ごしに睨み合う。彼女はその様子に全く気付いていないと思いきや、二人の不穏な空気には気づいてるらしい。

『仲良く仲良く!』

彼女はいがみ合う2人の片手をとってブラブラ大きく揺らす。休日、母と父と手をつなぎ、楽しそうに歩く子供のようだ。そして暫くしてから彼女は2人の手を前に出して、無理矢理繋がせる。

そうしてから、彼女は何事もなかったように、前を歩いていた日向に駆け寄った。


「うおぉー…人がいっぱいいる…!体育館でけぇ!そして…エアーサロンパスの匂いっ…!」
『本当だー!』
「この匂いって"大会"って感じがすんだよなー」
「わかる!」

翔陽君に同意した西谷先輩。これがいつも皆が感じる大会の匂いなのか。静かに息を吸って匂いを確かめる。目を瞑って匂いを確かめていると誰かにぶつかってしまった。

『ごめんなさっ……!』
「あっれ〜?なんでここに小学生がいんの?」

顔を上げてみると、ぶつかったのは伊達工業のジャージを着ている人だということが分かった。直ぐに謝ったけど、まさか小学生だと思われているなんて。これでも高校一年生なんだが。うーん、解せぬ。

『ごめんなさい、怪我とかないですか?』
「大丈夫。てかキミ烏野のマネ?」
『はい!』
「へぇー、マネ増えたんだ」

私が衝突したにも関わらず、ニコニコで気さくに話してくれる茶髪さん。勝手に伊達工ってもっと怖い人ばっかりいるものだと思っていたけど、そんな人だけではないようだ。

ホッとしていると、茶髪さんの隣にいた白髪の人がアサヒ先輩を躊躇なく指差した。さっきから茶髪さんしか見えてなかったけど、この白髪の人怖いぃぃぃ!

「青根、この子ビビっちゃってるけど」
「…………。」

アサヒ先輩を指差していた、青根さんと言う眉毛のない人は、今度は私の方をジッと見た。睨まれたような感覚に陥って足が震える。うわっ……、怖い、怖くて動けない。

何かされると思って身構えていたけど、案の定青根さんはペコリと一礼した。あれ、…いい人?一礼をされたので私も慌てて一礼し返した。駄目だ!見た目で人を判断するなんて最悪だ!そんなことしちゃダメだって小学校で習ったはずだ。

「キミ一年生?」
『はい、一年生です』
「どうりで前回いなかったわけだ」

茶髪さんは更に笑みを強めた。悪戯が成功したみたいに無邪気に笑う人だなぁ。

「ちょっとちょっと、やめなさいっ!」

茶髪さんと話していると、焦ったような声が聞こえてきた。その声のする方向では青根さんが再びアサヒ先輩を指差していた。それを制そうとする伊達工の先輩らしき人物。

「おい二口、手伝えっ!」
「はーーーい」

先輩らしき人がいくら青根さんを押してもビクともしない。そこで私とさっきまで話していた二口さんに助けを求めたわけだ。

「ところでキミの名前は?」
『私は烏野高校一年の苗字といいます』
「苗字ね、了解」
「名前、行くぞ」
『あ、ごめん。今行くね』

青根さんを制しつつ私に問いかける二口さん。そこで影山君に呼び止められる。そうだ、これから試合だった。

『それではまた』
「またなー」

そして私は大体育館に向かって走り出した。


____手を繋いじゃった二人のその後

「(ツッキーがいつも以上に機嫌が悪い…!)」
「影山ー、うぉ!どうしたそんな眉間にシワを寄せて!」

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