ひよこが駆け巡る!





先ほどから翔陽君が何かを探している。

「あ、バスにタオル置いてきちゃった…!」
「何やってんだ日向ボケェ」
「だ、だ、だだだってよぉ!」
『翔陽君、ここは私に任せて!』
「あ、ありがとう〜!!神様だぁ!!」

この時のために体力を温存してきたのだ。翔陽君のタオルをバスから持って来るなんて朝飯前だ!朝ご飯は食べちゃったけど!さっそく武田先生にバスの鍵を借りて、駐車されたバスに向かう。

『(急げー急げー!翔陽君が待ってる〜)グヘッ!』

脳内で歌を歌いながらバスに向かっているとまたもや誰かにぶつかってしまった。ちょっと私に危機感なさすぎかも…。何人に迷惑をかければ気が済むんだ。

『ごめんなさい!』
「あ、……苗字、だっけ?」
『貴方は、二口さん…?』

二口さんと2度目の遭遇。そして同じ人に2度もぶつかってしまって本当に申し訳ない。

『ぶつかっちゃってほんとにごめんなさい!それでは、急失礼します』
「ちょっと待てよ」
『はい?』

申し訳ないと思いつつも、早くタオルを取りに行かなければいけないという使命に駆られ、その場を立ち去ろうとするけど、突然手首を掴まれた。

***

二口side

おいおい。なんで俺こいつの手掴んじゃったんだよ。本当わけわかんね。
あまりにも無意識に手を取っちゃったから何も話すことなんて考えていなかった。

やっちまった。
どうやって誤魔化せばいいんだよ。

しかしよく見ると本当に小さいな。普段の俺的には、烏野のもう一人の綺麗系のマネージャーの方がタイプだが、こいつも悪くない。今までお子様タイプは眼中にないと思ってたわ。って何言ってるんだ俺は。別に好きとかじゃねぇし、あ、分かったわ。可愛がっていた近所にいる子犬に似てるんだ。だから既視感を感じたわけだ。妙に納得したわ。


『どうしたんですか二口さん?』

俺を見上げてくる苗字が、一瞬、ほんの一瞬だけどヒヨコに見えた。さっきまで子犬だと思ってたはずだった。

「ヒヨコ……」

また無意識に口走った。マジで何言ってんだ俺。ほら苗字もポカンとしてるし。

『あ、やっぱりヒヨコに見えちゃいますか!?』
「は?」
『最近皆にヒヨコ、ヒヨコ言われるんです。二口さんもそう思ったってことですよね?』

予想もしていなかった返事に、どんどん笑いがこみ上げてきた。こいつ滅茶苦茶変わってるわ。

「プッハハハ!苗字どっかズレてる!」
『えぇ!?』

なんだこいつ。めっちゃ面白いじゃん。オドオドしながら俺を見上げる苗字の間抜けヅラに盛大に笑ってしまった。他校に面白いおもちゃを見つけた気分だ。

前 |67/226| 次