金曜日
入部して間もない私の世話をしてくれる潔子先輩を、日に日に好きになるばかり。潔子先輩の美しさは罪だという人がいるが(主に田中先輩)まさにその通りだと思う。
「ふ」
「あ〜〜あ」
練習の途中で二人揃って大きなあくびをした先輩方を見て、朝練を頑張っているんだなとしみじみと感じた。一年生二人の面倒を見てくれる先輩たちは寛大だ。
「眠そうだな、お前ら」
恐らく事情を知らないであろう澤村先輩は、あくびをした田中先輩と菅原先輩に鋭い言葉をかけた。ばれてはいけないと必死に隠蔽しようとしていて
「えっ、そぉ!?勉強のしすぎかな〜?」
「おっ、俺も勉強のっ」
と言ってから明らかに不自然な態度をとっていた。澤村先輩は二人のこの行動を少しだけど怪しんでいたから、朝練をしていたことは時間が経てばバレるだろう。
「まぁいいや。今日から入部の1年紹介するよ」
切り替えの早い澤村先輩の一言。とうとう同じ1年生の新入部員のお目見えだ。
「宜しくお願いしまぁーす!」
『月島君、山口君…!』
ついこの間喋ったばかりの二人が、体育館に顔を出した。二人ともどうやらバレー部希望だったらしい。全然そんな感じしなかったなぁ。
「へぇー、ヒヨコ、バレー部のマネージャーだったんだ」
無気力に、あまり関心のなさそうに言う月島君。そしてその月島君の後ろでコソコソとしている山口君。アンバランスの4人が新入部員………。
こういうこと言っていいのか分からないけどちょっと今後が心配になってしまった。
仲良くしなきゃ、多分また彼らは澤村先輩に怒られる。それだけは避けたい。だって、澤村先輩は優しそうに見えて、怒ったら怖い人ですから。
***
「っけ、な〜んか気に入らねーな、さっきの新1年」
月島君と山口君が去った体育館で、田中先輩は眉を顰めて出口を見つめていた。
「お前初対面の奴大体気に入らないじゃん。アレだろそういう習性だろ」
「習性って…」
でもまさか新入部員が月島君と山口君とは思わなかった。世間とは狭いものだ。数日前まではこの人たちが同じ部活になるとは思わなかったもの。
「でも…予想以上の来たな…明日大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですよ。俺だって入るんスから!!」
「……そうだな、影山もいるしな」
『そうですよ!皆がいればきっと勝てます!』
私なんかが生意気な事を言うかもしれないけど、朝練をしてまでこの土曜日に賭けてきたんだからきっと大丈夫だ。まだ月島君と山口君の実力を知らないのが問題だけど。
「オォ!マイエンジェル……、この感じもまたいい…!」
「エンジェル…!?田中、お前なに言ってるんだよ」
「声をかけてくれる女子がいるだけでなんか士気が上がるんスよ…!」
「そ、そうだな。って事で苗字。この調子で田中の士気を上げてやってくれ」
『は、はい!具体的にどうすれば良いのでしょうか?』
苦笑いした菅原先輩はやたらテンションの高い田中先輩を見ながら
「話しかけるだけでいいから」
『わかりました…!』
と申し訳なさそうに言うものだから、私まで眉を垂らした。私なんかで良ければ、田中先輩とお話しさせてください。寧ろお話ししたいです。
田中先輩とお話しすると、なんだかブワァーッとテンションが上がって、スカーッとします。裏表のない人だから余計に話しやすいのかもしれません。
『田中先輩!頑張ってください!』
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!頑張るぜぇええええ」
なにやら燃えている田中先輩は、そのテンションのままコートに入っていったのでした。
「(田中が単純な奴で本当に良かった…)」