ひよこが駆け巡る!





伊達工業高校との試合直前。

私は周りの状況を確認する。相手コートには伊達工業高校の姿。味方コートでは烏野高校がアップしている。はたまた別のコートでは青葉城西高校がアップをとっている。

一度視線を上に持っていけば、まずまずの観客の数。満席ではないとはいえ、誰かに見られているという緊張感がなくなるわけではない。

そう思っている私も、先ほどから足の震えが止まらない。1試合目の時よりも緊張しているのが分かる。何故って、相手の雰囲気に呑み込まれそうになってしまっているから。

相手の応援の数は私たちの倍はいて、それでいて体育館に響き渡るような応援の声の威圧感がある。呑まれるな…!平常心平常心…!

何度も大きく呼吸をして自分を宥める。そうしていると、アップ中の零れ玉がこちらに飛んできた。といってもスピードは緩めで、私でも取れるものだった。そこへすかさず翔陽君がやってきて、ボールを翔陽君に投げ返した。

「あざーっす!…あれ、心配そうな顔してどうかした?」
『ううん、何でもないよ。翔陽君、次も期待してるよ!』
「おっす!!」

こんな会話もこれで何度目だろう。でも期待しているのは毎回本当のこと。嘘偽りはない。先ほどの試合みたいに相手を翻弄する翔陽君の姿を見るのがとても好きだ。コート内で駆け回る翔陽君の鳥みたいなジャンプ力を見ることも好きだ。そして、影山君とのコンビネーションで速攻を決めたときの表情を見ることも好きだ。

「な、名前ちゃ、ちゃん!」
『なになに、どうしたの?』

急に翔陽君が私の名前を呼びだしたので何事かと思って、翔陽君を見れば必死さが伝わってきた。

「俺、絶対勝つ!勝つ…、から、終わったら、えっと…褒めて、くれるかな?」

キュン……………!

翔陽君の可愛らしさに思わず心臓が高鳴った。駄目……、可愛い過ぎた今のは。私の何十倍も可愛かった。なんで翔陽君は女の子に生まれて来なかったんだろう。翔陽君が女の子だったら多分部内で一番モテてているはずだ。素直だし、すごくいい人だし、何より元気だから、こっちまで元気をもらえる。

『うん、いっぱいいっぱい褒めさせて!』
「あ、ありがとう!!」

翔陽君は照れながらコートに戻っていく。
試合が終わったらもちろんの事褒めたい。褒めたいなんて上から目線の言葉を使っちゃ申し訳ないけど、いっぱいいっぱい褒めちぎりたい。試合に勝とうが負けようが、翔陽君も、もちろんみなさんのことも褒めまくりたい。私に語彙力はないけど、自分の気持ちを精一杯伝えたい。

前 |75/226| 次