伊達工業高校との試合が始まった。
公式戦ではマネージャーは一人しかベンチに入れないので、ボール拾いをしてから、私は観客席からの観覧になる。コート内は少し遠いけれど、上から見ていてもものすごい迫力だ。
相手のブロックが凄まじく強い。鉄壁と謳われているそのブロックには息を飲むものがある。
何度か相手のブロックに捕まったりしたけど、烏野の皆はなんとか食らいついている。寧ろ流れは烏野に向いている方が多かった。
これも今までの練習のおかげ。彼らの頑張りのおかげ。
三ヶ月前の屈辱を晴らすため、再び戻ってきたこの舞台。負けるはずがない。
でも相手だって必死に食らいついている。妥協したらその時点で負け。
必死にボールを追いかけるだけ、それだけで勝ちへの可能性が高まっていく。
ひたすら貪欲になってボールを追いかける、そのひたむきな様子に何度も何度も心を打たれた。
アサヒ先輩の有志にも胸が高鳴った。体全体で俺が烏野のエースだと叫んでいた。そうだ、烏野のエースはアサヒ先輩だ。そのスパイクで心も何もかもぶち抜く。その様子が周りを感化させ、そして徐々に花を咲かせて行く。そして、アサヒ先輩はきっと気づいた。自分は一人じゃない、周りには支えてくれる仲間がいるのだと。
恐れるな、前に進め。言葉だけなら何度でも言える。行動が全てを変えるのだ。そして結果が全てを物語る。
勝ったときのあの嬉しそうな表情。負けたときに悔しさを滲ませたあの切ない涙。どちらを見たいかと問われれば前者と答えるに決まっている。
彼らが私に見せてくれた勝ち試合は、何よりも輝きをくれた。アサヒ先輩が言った"お前らはヒーローだな"という言葉はまさに彼らにピッタリだった。
そんな中、相手の様子がふと目に入った。誰も泣いていなかった。こう言えば語弊があるかもしれないが、泣きそうになっている所を必死に抑えているように見えた。
彼らはバレーだけでなく、精神も強いのだろう。
でも、泣きたいときは泣いて欲しい。あまり思いを溜め込まないで欲しい。いつかきっと爆発してしまうから、その前に少しずつでいいから涙を流して欲しい。でも泣く事だけが全てじゃない。きっと、今は次の段階へと既に足を歩ませているのだろう。泣いている暇があったら、前に進めということなのだろうか。
そして気づけば彼らは静かに泣いていた。その姿を見て何故か心が温かくなった。ちゃんと心から泣いてるって分かったから。
やっぱり、ちゃんとバレーやってたんだな……。