ひよこが駆け巡る!





翔陽君とは帰り道が途中で違ったため、途中で別れを告げた。今は影山君とこうして帰宅している。とはいえ、私の家は学校から徒歩10分程度の場所にあるから、あまり長くはいられないのだけど。そんな短い間でも、しっかりと送ってくれる影山君は不器用な紳士だ。

『明日はいよいよ青城戦だね』
「そうだな」
『さっき翔陽君も言ってた通りだけど、眉間にしわより過ぎ!』

こんなに暗くても、時々見える電柱の灯りに照らされれば、彼の表情は直ぐに分かる。

『ほらニッコニコ笑って〜。笑顔だよー』
「んな笑ってられねーよ!なんでお前はそんな笑ってられんだよ」
『あ、また"お前"だ。』

前みたいに名前では呼んでくれないのかなぁ…。電柱のそばでシュンとした素振りを見せると、影山君は少し歩くペースを速めた。

ありゃ、怒らせちゃったかな!?

『ごめん、影山君。怒らせちゃった…?』
「……違ぇ」
『お腹すいた…?』
「…半分あってるけど、半分違ぇ」

えぇ!!惜しいってこと?えっと……じゃあ。私は理解に乏しい脳を必死に稼働させるが、理由が思いつかない。

『えっとね…、じゃあ、なんだろう』

暫く考えても答えは出てこない。影山君の不可解とも呼べる行動の原因を探っても、答えが出てこないのだから泣きたくなってくる。

『あぁ、もしかして…!明日の試合に向けて煮えたぎってる…?』
「まぁ、そういうことにしとく」
『影山君は難しい人だね』
「お前に……名前に言われたくねぇ。」

え、今名前で呼んでくれた…!?今まで何度か呼んでくれたが、やはり嬉しいものだ。

『名前…、呼んでくれた。ありがとう!』
「そんな喜ぶ事かよ…。ってかな、名前の方はどうなんだよ」
『ん?』
「俺のことはまだ、苗字呼びだろーが」

あ、そういえば。それじゃあお互いフェアじゃないってことだね。珍しく反論して来たかと思えば、とても可愛い反論だった。まだ影山君のこと苗字呼びだったね。苗字で呼ぶことにもう慣れちゃったから、照れ臭いかも。

『そういえばそうだね!えと、…とびゅお君!』

もうとびゅお君でいいじゃないか。うん、いいじゃないか…。私のこの肝心な所で噛む癖を直したいと思います。

「とびゅおじゃねーよ!」

鋭いツッコミもいただきました。人様の名前をちゃんと呼ぶことができない私なんて、まともな人間じゃない!ごめんなさい。

『ごめんごめん。それじゃあ飛雄君って呼ばせてもらうね。実はね、ずっと"飛雄"って言う素敵な名前を呼びたかったんだ。バレーが好きな影…、飛雄君らしい名前だな〜って思ってた』
「んじゃ、まぁ、それで…」

お互いに名前呼びをする日が来るなんて…。感激です。また飛雄君と仲が深まった気がします。

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