いよいよ始まった試合の1セット目は青葉城西が取った。
それに猛追するように2セット目は烏野が取った。
その間にも数え切れないほどのドラマがあった。
菅原先輩がセッターとして、チームの信頼の証として、精神的支柱として試合に出たこと。
ドラマがあるのは私たちばかりじゃない。相手にも同じように物語がある。勝ちたいのはどちらも一緒だ。
勝ちたい気持ちは人一倍だったはずなのに、私たちは負けた。あの青葉城西に。
敗者と勝者。その差は大きい。
飛雄君と翔陽君は今日の負けは自分のせいだと、自分を責めたと思う。でも、武田先生の深みのある言葉のおかげでなんとか前に進めたみたい。今日の負けは次へのバネだと、武田先生は遠回しにそう言ったのだろう。
そして、試合が終わったその日。皆で近くの定食屋にご飯を食べに来た。その定食屋は烏養コーチがお世話になっている定食屋だった。そこでは、図々しくもマネージャーである私もご飯をいただくことになった。そこで食べたご飯は、お袋の味というか、懐かしい味がした。
優しくて、しっかりと味のしみ込んだ肉じゃがを食べて、自然と涙がこぼれる。いちばん悔しいのは私じゃないことくらい分かってる。
でも私も、もっともっと強くなりたい。
こんなに情けない涙を流さないで、皆を元気付けることができるくらい、もっともっと強くなりたい。精神的にも身体的にも、皆を支えられるようになりたいのです。私なんかが生意気かもしれないけど、少しでも長く彼らとバレーをしていたい。
だから、今はこのご飯をいっぱい食べて、少しずつ。でも確実に強くなるんだ。
『………美味しい!』
そのご飯はきっと皆の涙の味がしたんだろう。
そういえば……、今回の大会を終えた三年生はこれからどうするんだろう。まだバレーを続ける、のかな。それとも…もう引退なのかな。
'引退'それは、始まりがあれば必ず来る終わりを意味する。スポーツ選手が避けては通れない道だ。それがどの位先になるのかはその人次第。スポーツが出来なくなるような怪我や病気をしてしまえば、なんの前触れもなくそこで終わりを迎えた人もいる。どんなに健康的な人でも、向き不向きのスポーツがある。その人の気持ち次第でその引退のタイミングはいくらでも変化する。
我が儘だって言うのはわかってる。でも、私はまだ3年生のみんなとバレーをしたい。その選択が将来を左右することだって分かっているはずなのに、一緒にいることを選びたい。
あぁ、きっとそうだ。私はこんなにも烏野高校バレー部を好きになっていたんだ。