ひよこが駆け巡る!





4時間目の授業が終わった。

今日は宮城県IH予選の最終日。私たちが立てなかった舞台に青葉城西は立っている。きっと若利君率いる白鳥沢もその場所に立っている。

悔しいだなんて言葉では済まされない位、感情が揺さぶられている。

体育の授業が終わった後、飛雄君は一人体育館に残ってさっそくバレーボールを触っていた。やっぱりバレーが死ぬほど大好きなんだなぁ。

私はその姿を無言でひたすら見続けた。すると3分もしないうちに翔陽君が物凄い勢いでやってきた。

そして二人は無言でパス練習を始める。珍しく大人しい二人を見ることができたと思ったら、直ぐさまお互いに奇声をあげて、ガムシャラに走ったりボールを打ち始めた。

あぁ、やっぱり二人は私よりもずっと悔しいんだ。

そして動き疲れた二人は、地面に這いつくばった。息は上がったまま、何度も荒い呼吸を繰り返す。

「………勝ちてぇ」
「…俺は、もう謝んねぇ」
「…?」
「謝んなきゃいけないようなトスは上げねぇ…!」
「時間ない。止まってる暇無い」

ポツリポツリと紡がれた本音。一言一言が重くて、本気だ。

『私も、今までずっとずっと潔子先輩とか、皆に甘えてた』
「………。」
『それじゃあ強くなるわけないって分かってるのに、皆が優しくしてくれるから、その優しさにずっとずっと甘えてたの』
「そんなことない!名前ちゃんは一人でも十分頑張ってるよ!」
『あ、ありがとう…!こんな風にみんなが優しすぎるから、その言葉だけで舞い上がっちゃう。でもね、私決めた!』

皆が優しい言葉をくれることが普通になってるようじゃ心まで強くならない!

「…何をだ」
『皆と前に進むって!皆に引っ張られるんじゃなくて、同じスピードで少しずつ強くなろうって決めました!だって皆が大好きだから!!』

綺麗事かもしれない。それでいい。これが私が出した答えだから。妥協しないで、つけあがらないで、自分に厳しく!をモットーに頑張ろう。時には頼ることだって必要だ。だけど、頼ってばかりでは自分が成長できない。

翔陽君と飛雄君の変化を間近で見て、この2人なら勝てるんじゃないかと思って、安心しきってた。でも叩きつけられた公式戦での負けに、今までにないくらい心が震えた。負けがこんなに悔しいものだと初めて知った。

負けたくない。試合にでているのは私じゃない。だけどその他のこと、出来ること沢山あるはずだ。例えば、練習の時ボール拾いを積極的にするとか、選手の体調をしっかり見極めて、怪我を俊敏に気づくとか。些細なことでも力になりたい。

どこか勝ちを甘く見ていた私は、勝負を甘く見ていた。勝負はそんなに簡単なものではない。私はバレーの多くをまだまだ知らない。知らないことの方が多い。だからこそ、みんなと一緒に知っていきたい。大好きでたまらない皆と一緒に…。

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