「名前」
『はーい。どうしたの飛雄君?』
まだ名前で呼びあうのは慣れてないけど、最近は積極的にお互いの名前を呼ぶようにしている。なんかこうくすぐったくて、照れ嬉しいみたいな感じです!
「ここ教えてくれ」
そう言って飛雄君が持っていたのは、古典やら英語やらのノートだった。う、うわー…、真面目!これだけ勉強熱心になった飛雄君は初めて見た…!いつもは授業中に白目むいたりして寝ているのに。ここまでの本気度を見る限り、彼はどうしても東京合宿に行きたいらしい。
『私で良ければ…全力で教える!』
あ、そうだ。自分は自分で数学とかで分からなかったところは、ちゃんと月島君に聞きに行かないと。彼らの心配ばかりするのではなく、自分の心配もしなければならない。もし翔陽君や飛雄君に赤点がなくて、私に赤点があったらお話にならない。
自分の苦手も克服しないことには始まらないこともある。
『えっと、ここはどういう文法になってるか分かる?』
「さっぱり分からん」
『それじゃあ初めから説明するね。』
人に教える側に立ったのは本当に久しぶりで(以前、近所の小学生相手に勉強を教えたことがある)、どうやればいいか忘れちゃってたけど、飛雄君に教える度、徐々にその感覚を思い出してきた。結構人に説明するのって案外楽しい…!誰かに説明しているうちに、私もより深く理解することができ、一石二鳥だ。
「お前、説明分かりやすいな。まじ助かった」
またお前呼びになっているのはスルーしておいて、飛雄君に褒められちゃった。凄く嬉しい。滅多に人を褒めるような性格じゃないってことを知ってるから、余計に嬉しい。飛雄君は褒める時はストレートに褒めてくれるけど、月島君は褒めてるのか褒めていないのか分からない絶妙な言い回しをしてくる。
『お役に立てたなら何よりです。いつでも聞いて』
「あの月島よりだったらよっぽどいい」
『あはは、でも私なんかよりずっと月島君の方が頭いいから』
事実を述べるとちょっと自分でガックリした。私ももっと頑張らなきゃなぁ。
「頭の良し悪しは知らねぇけど、教えるのはお前のほうが数百倍うめぇよ」
『う、うわー…、恥ずかしい、けど、ありがとう』
なんだか今日は凄く褒めてくれる。そういうの慣れてないから、ちょっと恥ずかしくなってきたぁーーー!!頬を両手で包んで、照れてるのがバレないようにする。
『嬉しい…。けど、恥ずかしい』
「何恥ずかしがってんだよ」
『と、飛雄君のせいだ!』
「何がだよ!」
私は勝手に人のせいにして、急いで逃げていった。顔の温度はいつもより幾分か高い気がする。くっそー!実は飛雄君、天然タラシか!?