『〜♪』
「やけに上機嫌だな…、なんだその顔」
『え、気持ち悪かった?ごめん!あまりにも嬉しくて…』
「いや、気持ち悪くはねぇ…けど。何かあったのか?」
今日も今日とてハードな練習が終わった後、飛雄君とお話をする。もちろん平日の練習だったため、外はすっかり暗くなっている。飛雄君は汗を自分のタオルで拭きながら、涼しい顔をしている。あれだけハードな練習だったのに、まだ体力が残っているなんてすごいなぁ。若いっていいなぁ。ここでは彼と私が同い年であることは触れないでおく。
『実は今日は潔子先輩と仁花ちゃんと帰ることになったのです!』
自慢げに飛雄君に語る。どうだ、羨ましいだろう!可愛くて綺麗な2人に囲まれる私は幸せなんだぞ!羨ましいだろう、飛雄君よ!田中先輩や西谷先輩が聞けば、泣いて羨ましがるような状況だ。
私は少し鼻が高くなる。
「またお前は、」
『大丈夫だよ。今回は3人もいるよ!一緒に帰れば怖くないよ!』
きっと飛雄君は可憐な潔子先輩と仁花ちゃんが襲われることを心配しているのだろう。いざとなったら私がちゃんと助けるし、心配することは何もないよ。こう見えて、申し訳程度ではあるが、護身術くらいは心得ておりますから。
「どうした、二人で?」
「菅原さん」
『菅原先輩!』
「こいつ、…名前がまた女子だけで帰るって言ってんすよ」
いまこいつって言ったな…!?言い直してはくれたけど。急に名前呼びに慣れろって言われても難しいだろうし、少しずつ慣れていってくれたらいいなぁ。
「そういや最近ここら辺で不審者が現れたとか言ってたな…」
菅原先輩は顎に手を当てて考えている。不審者の話は今になって初めて聞いた。ここら辺はいつからそんな物騒に…?
「今日は俺が送って行こうか?もちろん後ろで見守ってるだけにしとくけどな」
エンジェルスマイルに心癒されるのは私だけではないだろう。
『菅原先輩ぃ…、先輩は優しすぎます。部活後で疲れていらっしゃると思いますし、早く帰って早く休んだほうがいいと思います!気持ちだけ受け取っておきます……!』
半ば菅原先輩の優しさに感動して泣きそうになったけど堪えた。よく耐えた私!!
「そりゃ俺は田中とか影山とかよりも頼りないかもしれないけど、用心棒にはなると思うんだけど…」
先輩は少しションボリした表情になった。嫌だ、…こんなにも優しい菅原先輩を悲しませたくはないっ!
『そんなことないです!菅原先輩は頼りになりまくりです!』
「じゃあ送っていってもいいよな?」
『はい、もちろんです!………ん?』
「菅原さん…スゲー…」
飛雄君が感嘆の声をあげている。それもそのはず、私はまんまと菅原先輩の口車に乗せられたのだ。それも本当に呆気なく。どうしよう、私は単純すぎる。自分の将来が心配になったのはこれで何度目だろうか。絶対詐欺事件に巻き込まれないようにしないと。
しかし部活の先輩と一緒に帰ることができるというのもなかなか嬉しいものだ。
結局、菅原先輩と飛雄君がそれぞれの家まで送ってくれましたとさ。めでたしめでたし。