「あ」
『あ』
京治君に想いを告げられたその数日後だった。学内で出会ったのは瑠璃奈さんだった。彼女は少し痩せたように見える。その姿を見てとても心が痛くなった。京治君はどんなことを言って別れを告げたのだろうか。彼の事だからこっぴどく振るなんてことはないと思うけど。もしその別れが私のせいだと思うと、他人事ではいられなくなる。
「久しぶりだね」
『…瑠璃奈さん、久しぶり』
なんとなく会うのが気まずい。数日前に想いを告げられなかったら、私の気持ちはもっと軽かっただろうか。
「そうだ、私、もしかしたらもう聞いてるかもしれないけど、京治君と別れたんだぁ」
『…そうなんだね』
「あー、そんな暗い顔しないで…。全然元気だよ。っていうか多分、京治君初めから私の事見てなかったのかも」
彼はそんな不誠実な人じゃないと思う。ちゃんと好意があって、付き合ったはずだ。
私は別れたという事実を知りながらも、いかにも初めて利いた風を装う。渦中の彼から聞いたなんて言ったら余計に瑠璃奈さんを悲しませることになると思ったからだ。
『どうしてそう感じたの?』
「いっつもバレーばっかりで、デートも両手で数えられるほどしか行ってないし、話す話題もバレーか食べ物の話ばっかりだし」
尻込みするような口調だ。彼女が無理やり笑っているのが分かってしまった。こんな辛い思いをさせてしまっている原因が私かもしれない。
「私に興味、なかったと思うんだよね」
『そんなことないよ!私、二人が歩いてるところ見て、お似合いだなって思ってたし、付き合うんだったら二人みたいになりたいなって思ってた!素敵なカップルだと思ってたよ』
ここで嘘を言うほど性格は悪くないつもりだ。嘘偽りのない自分の正直な気持ちを伝えると、彼女は再会して初めて柔らかく笑ったような気がしたのだ。
「ありがとう、そう言ってくれるだけで嬉しい」
こんなに可愛い瑠璃奈さんは、きっと真っすぐ彼を見つめてきたはずだ。どうか彼女が救われますように。私がそう願うこと自体おこがましいことなのかもしれないけど。
『あの、私じゃ何も言ってあげられないかもしれないけど、……困ったときはいつでも連絡してね』
「ふふ、優しいね」
『ううん、…私、全然優しくないよ。力になれたら、…いいんだけど』
瑠璃奈さんに対する罪悪感でいっぱいになる。そもそも私が彼女の力になろうとする時点で間違っている。でも、少しだけでもいいから彼女の気持ちを和らげてあげたいなんて思っている私は偽善者なのかもしれない。
「ううん、なんか元気出た。ありがとう」
彼女からのありがとうはとても心に染みた。
恋愛とはすべてが予想通りにいくものではない。時に喜び、時に苦しみながら育む愛がある。今回の恋は、ちょっと王道のそれから逸れちゃっただけだ。うまくいかない事だってある。
でも、だからこそ、絶対、絶対に…幸せになってほしい。