愛してんだよ
今日は凛君との久々のデート。楽しみすぎて昨日服を選ぶのに時間がかかった。
どんなにオシャレをしてきても、凛君の性格上"可愛い"という言葉は出てこないのは承知している。
本当は言って欲しいけど、凛君と二人で並んで歩くことが出来るだけで心は満足するのだ。
そんな訳で、私には素敵な彼氏がいるわけだけど、彼は私で満足出来ているのだろうか。あんなに容姿がいいから、何度も逆ナンや告白を受けていると聞く。
それでいて嫌われるような性格をしていないので余計にモテてしまう。それが心配でならないのだ。
いつ彼が私から離れて行くか分からない恐怖に怯えている。もしからした私何かよりずっと美人さんの事を好きになっちゃうかもしれないし。
…それでもしょうがないんだよ、凛君はカッコイイから。と、自分に言い聞かせても、やっぱり凛君のことが大好きで、離れて欲しくないのが事実だ。
「ねぇ、凛君」
「何だよ」
「私と水泳、どっちが好き?」
「は……?」
何を馬鹿な質問をしているのだ。凛君が困ってしまうではないか。現に、彼は端正な顔をくしゃっとさせて真剣に考えている。
「ううん、ごめん何でもないよ…。困らせちゃってごめんね」
「水泳」
「……えっ?」
「だから水泳……」
水泳に負けた……?あまりにもショックで目眩がする。私たちは恋人同士じゃなかったの?見え見えの落ち込み方をして凛君をまた困らせたくないので平然と笑って見せた。
その態度が気に入らなかったのか分からないけど、一瞬の隙にぐっと手を引っ張られたかと思うと、目の前は凛君でいっぱいになって。同時にふにゃりとした感触が唇に走った。
それを感じれば、ああ、キスされたんだ。という事を理解した。それが不思議と嫌だとは思わなくて。
今まで手で数えられるほどしかキスをしていないからか、嬉しいというよりも羞恥が優っている。これも惚れた弱みなのかな、なんて思ったのだけど。
「……お前のことは愛してんだっつーの。」
そう言い残してそっぽを向いた。真っ赤な顔して言い逃げはズルいです……。
凛君がぶっきらぼうに行くぞと言ってから、手を差し出されば、それを掴むという選択肢しか残されていない私はその手を迷いなく取った。
すると、またその手を引っ張られたかと思うと――私の体は、凛君にぎゅうぎゅうと抱きしめられることになって。彼から伝わる温度が温かくて、手放したくないだなんて、思ってしまったから。
私はそっとその背に手を回しぎゅうっと、抱きしめ返したのだった。