代わりなんていないのに


「名前ちゃん、ごめん待った?」
「…遅い。どれだけ待ったと思ってるの?」

快晴の日曜日。俺らバスケ部は久しぶりの休日。
だからこうして可愛い彼女ちゃんをデートに誘ったんだけど…、さっそく俺に対しての当たりが強くないか。彼女は遅いというけど、まだ待ち合わせ15分前なんだけど!?

「…、そんじゃ行きますか。」
「うん」

自然と体は近づき、手が重なる。それは所謂恋人繋ぎってやつで。
今日はこれから映画を見て、ウィンドウショッピングをして…。そんじょそこらの高校生と何ら変わりないことをする予定だ。待ち合わせは11時だったらからきっと。昼ごはんはまだ食べていないだろう。
 
「腹減ってない?どっか食べに行く?」
「うーん、和成が決めて。」
「了解!」

肯定の意を込めて握っていた手をギュッと握った。すると、ほんの少しだけど握り返してくれた。

***

ご飯を食べ終え、映画館に向かうと人混みだった。俺たちが見たい映画(詳しくいえば彼女が見たい映画)は人気の少女漫画を実写化したものだ。名前ちゃんがずっと見たい見たいと嘆いていた事は知っている。


…実際の映画の感想は、展開が早すぎて俺にはイマイチ内容が分からなかった。名前ちゃんはそれなりに楽しんだみたいだから良かったけど。ってか隣で泣いてたな。


しかし、俺は映画の中の男に物申したい。なんであんなに好きな彼女をおいて先に逝っちまうんだよ!俺だったら絶対名前ちゃんをおいていかないし。でも、病気なんだからそんな事も叶わないのか…。それって虚しくね?

今思ったけど、映画ってよく考えさせられるもんだなー…。


「…ねぇ!ねぇってば!」


映画館を出た後一人で考え事をしていると近くにはぷゥっと頬を膨らませた彼女の姿。ずっと俺に呼びかけてたらしい。

「あ、ごめん。考え事してたわ」
「なにそれ。」

「……名前ちゃんはさ、俺が病気で死んだらどうする?他の男のとこにいく?」

我ながら狡い質問だとは思った。だけど、これだけは聞いておきたい。

「何言ってるの?私は誰のところにもいかないよ?」
「…え?」
「だって、和成の代わりなんて何処にもいないんだか………あっ。」

名前ちゃんは言ってしまったと言わんばかりに頬を赤く染めあげた。ちょっと待って…。これ、嬉しすぎね?


俺は、変かもしれないけど彼女の怒った顔が好きだ。
でも、時々見せる照れた顔はもっと好きだ。

「…可愛い〜な。名前チャンは」
「う、うるさい!」