僕の思わぬ失態


「竜ヶ崎くん。…えっと用って?」


真ん前で柔らかく微笑む彼女に、僕の喉はゴクリと鳴る。焦っているのだ。今まで、陸上や水泳の大会なんてなんなくこなしてきた僕はかなり窮地に立たされているのだ。



長年想い続けていた彼女をついに、屋上へ呼び出すことができたのだ。呼んでしまったのだから取り返しがつかない事くらい分かっている。ここで失敗するわけにはいかない。


徹夜して必死に考えた告白を一字一句、間違えないように心の中で復唱する。念入りに調べ上げたデータを元に、僕はいざ苗字さんに告白を…。



僕の様子を小首を傾げながら不思議そうに見つめる彼女の姿が、あまりにも魅力的で一字一句のすべてが一気に吹き飛んだ。せっかく考えてきた告白の言葉が思い出せないのだ。

頭はパンク寸前。


「竜ヶ崎君?」


バクバクと跳ね上がる心臓。もしかしたら心臓が飛び出ているのではないかという錯覚に陥る。

取り敢えず心を落ち着かせようと深呼吸をする。


「苗字さん、僕、貴方の事が…「あっ、怜ちゃーーん!お弁当早く食べようよ〜!」…渚君…!」



空気を読んで下さい、渚君。せっかく勇気を振り絞って告白ができそうだったのに、台無しになってしまった。ムードもへったくれもない、ただグダグダになった。



***


この間の告白は失敗した…。ならば今度は誰にも邪魔をされない場所で告白をすればいいじゃないか。そう考えた僕は携帯のメールと言う手段を考えついた。


普段はあまり使わない携帯電話の文字入力を慣れない手つきでする。当然膨大な時間がかかるわけである。


"ずっと好きでした"

これではなんだか素っ気ない気がする。


カチカチ。
ボタンを押す音だけが部屋に響く。



たった一通で短文のメールを考え、携帯電話と格闘すること数時間。ようやく満足の行くメールがかけて一安心した怜は、あることに気づいてしまったのだ。

僕、彼女のアドレス知らないじゃないですかぁぁぁぁ!