透明色に色を染め


好きだけど素直になれない。

それは私の恋愛に関する最大の難点だ。本当は好きなのに思ってもない事をつい言っちゃうし。

私の場合、好きな相手がアイツだから、本人は全く気にしてないんだろうけど…。

「お前死んだよーな目してんぞ。」
 
死んだような目か。相変わらず言いたいことはズバズバ言う奴だ。ただ、考え事をしていただけなのに。しかもあなたの事を考えていただけだというのに。

「死んだようなって…。女の子に言うセリフじゃないんだけど!」
「お前女だったのかよ…」
「それも失礼…!」

「悪りぃ悪りぃ。冗談だよ、冗談。」

彼の奥で溜めたような低い笑い声。別に言葉に傷ついたりはしない。むしろ、冗談を言った後に、こうやってポンポンと頭を撫でてくれるのが嬉しくて。そして、悪戯好きの無邪気な笑顔を見るたびに胸がキュンと高鳴るのだ。

あぁ、片思いって切なすぎる。恋人ができた友達から"片思いの時が一番良かった"なんてよく聞くけど、それは人の感性によるもので。私にとってみれば、片思いは辛くてしょうがないものだ。

大輝にとっての私は、クラスで一番喋る奴程度の認識にしかすぎないと思う。

彼に好きな人はきっといないんだろうけど、仲のいい女の子ならいる。幼馴染で、スタイルもいい、美人の子だ。二人の間にはきっと壁なんてなくて、私が入り込む隙間なんて何処にもない。私には、ただこうして二人が話している様子を見てるしかないんだ。

……つまりは私は嫉妬してるんだと思う。あの美人ちゃんに。

「おい、さっきから何見てんだよ?」
「わぁ!」

急に大輝が目の前に現れるものだから、変な声を上げてしまった。色気のねぇ声だな。と言ってまたバカにされた。

「ってか何、お前俺の事好きなのか?」

大輝はきっと冗談で言ったつもりなんだろうけど、図星をつかれてしまった。コイツ…、勘が良すぎる。野生の勘ってやつ?

「な、なんで急に…?」
「さつきがそう言ってた。」

そう、ってどう言ってたんだよ!
要するに、さっきのセリフは大輝が冗談で言った訳でもなく、さつきちゃんという子が大輝に言ったと言うことか。頭の中で整理しようとするも、今の状況が益々分からなくなってくる。

「んで、どうなんだ?」
「……多分、好きなんじゃない?」

あぁー、また素直になれなかった。ここで本当の事を言って気持ちを知ってもらえば良かったのに。

「はーん、…そうかよ」

なんだよ、人が折角気持ちを言ったのに、この興味なさそうな感じ。

「……俺もお前の事嫌いじゃねーぜ。」

橙色はまただんだんと景色の全てを染めだした。私の狭い狭い世界も、無くなりはせずとも一瞬で見えなくなる。

だけど、この橙が蒼く変わるまでは家には帰りたくない。