照れくささの理由
「名前っち〜!」
「涼太君!」
「どこいくんスか?」
「どこって洗濯だよ」
私の前には終わったばかりの洗濯機と、その中の大量の洗濯物がある。部員が練習している間に前日のタオルやらなんやらを洗うのはマネージャーの仕事。今私はそれをしていて、そこへ涼太君が駆け寄ってきた。
「練習は?」
「休憩中っス!」
「そっか!」
「だから名前っちの手伝いにきたんスけど…。」
「おい、黄瀬!お前のファン何とかしろよ!さっきから煩くて集中できねー」
ごもっともです、キャプテン。練習中にも来るファンの女の子の数は数え切れない。キャッキャと声を上げるその姿はまさしく女の子らしくて。それもしょうがないか。彼女達はみんな涼太君を傍で見てたいんだもの。
「そんな事言われても。」
「言い訳すんな。お前のファンなんだからお前が何とかしろ。」
「そんなの理不尽っスよ〜。」
とか言いながら渋々女の子の達のいる方へ行った。涼太君がそちらに近づく度に女の子達の歓声が上がっている。
「毎日大変ですね。」
「あぁ、………。お前からも黄瀬に何とか言ってやってくれ」
「はい!今度言ってみます。」
キャプテンは呆れた顔でコートに戻って行った。実はキャプテンにも隠れファンが沢山いることは触れないでおこう。
さて、今のうちに洗濯物を干しますか…。私は重い洗濯物を持った。すると女の子達と話していたはずの涼太君が私の持っていた洗濯物を軽々と持ち上げた。
「涼太君、悪いよ!私が持つ」
「名前っちには俺を見てる義務があるんス!だから仕事早く終わらせて!」
「え、何その義務?」
「いいから、いいから〜。」
妙にテンションが高い涼太君に疑問を抱く。
「涼太君、休憩そろそろ終わっちゃうよ?やっぱり私が全部やるから…。」
「俺だって少しでも長く名前っちと一緒いたいんだけど……?」
「………!」
涼太君は音も立てず近寄り、洗濯物を持ったまま私のおでこにキスをした。
「でも笠松先輩に怒られそうだから今日はこれで我慢するっス」
ニコリと笑って去っていた涼太君を目の前に、まだ温かいおでこに触れた。なんだか自分がしてはいけないことをしてしまった様な気持ちになって、妙に照れ臭かった。