君をいただきます
私はマンションの3階、角部屋に一人で住んでいる。そして、ここに定期的に訪れてくるのは、言わずもがな黄瀬君である。
彼は仕事で忙しい合間をぬってこうして会いに来てくれるのだ。今は友達という関係で落ち着いているけど、何故彼はこうして定期的に私のマンションを訪れるのかは疑問だった。もしかしたら私に気があるとか……?何ていうのは自分の自惚れでしかない。
そんな彼が、うちに入って来るや否や大変な状況に陥ってしまった。
「ちょ!ちょっと、待って…!」
彼の唇が私の首に触れ合う距離、という所でやっと声が上がった。無視しても良かったが聞き入れない訳にも行かない、といった様子でほんの少し身を離してもらえた。
そう、今は私が黄瀬君にベットに押し倒されている状態だ。
「何?」
「いやいやいやいや」
眉根を寄せるときょろきょろと視線をさ迷わせる。彼をこんなにも至近距離に感じるなんて。
ある瞬間ぱちりと視線が交わる。
見つめ合うこと数十秒の間にみるみる顔が真っ赤になっていく。
「顔、茹でダコみたいっスよ」
「な、なんで、……どうしてこうなってるの?」
腕を片手で押さえられているので、顔を隠す事が出来ない。でもなるべく顔を真横に向け必死に視線を会わさないようにしている。
「ねぇ、なんでこっちを見ないんスか?」
「だ、って、黄瀬君何時もより近い……。」
なんだか黄瀬君の様子がおかしい。何時もならもっと明るいし、ワンワンって感じで近寄ってくるのに。大人の色気を出した彼は初めて見た。
「……、ね、こっち見て」
「…」
頑なに横を向き応じない。すると、彼はわざと私の耳に吐息がかかるようにそっと
「名前」
「っ…!」
名を呟いた。ギュッと目を瞑り身体を震わせるその様子を瞳に焼き付けて、そのまま耳に直接呟く。そしてグニュリと頬を掴まれ方向を変えられる。ちょっと力が強すぎじゃないか。
「ッフ、なんスかこの顔」
「いひゃいよ、きしぇくん」
この人絶対私の反応を見て遊んでるよ。私は貴方の人形じゃないのに。
「やみぇてーーー!」
言葉がうまく伝わらない。このまま遊ばれるのも気に食わないけど、どうも動けない。私はそのまま為す術もなく後々に彼に食べられるのでした。