甘酸っぱい季節


『大好き』って簡単な言葉が中々言えなくて、私は何度も後悔をした。

想いは募るばかりなのに、それでも貴方と過ごせる季節はどんどん過ぎて行く。時間は誰も待ってはくれない。ただ、ゆっくりと過ぎて行く。

窓側に座っている端正な顔つきの黄色い髪の男子。
私の彼氏である黄瀬涼太。

彼は皆から慕われていて、正直なぜ私と付き合っているのかは未だに解らない。
バスケの才能も開花して今ではキセキの世代とまで言われる成長っぷり。今は仕事の数を減らしているけど、モデルの仕事をもやってのける。

私からして見て彼はなんでもできるパーフェクトな人間だ。

「名前っち!今日、一緒に帰れねっスか?」

いきなり私に問いかける黄色い頭。それはそれはキラキラした笑顔で、つられて笑ってしまうそうだ。

「うん、一緒に帰ろう。」


人気な貴方の事だからきっと貴方は私を見てくれない。私を包み込んでなんてくれない。

だから、もう嫌になった。…なんて心から思えたら良かったのに。私が彼を嫌いになるなんてことあり得ないもの。

…そういえば、もうすぐ私は転校するんだよ。


そうすれば、貴方の姿や笑顔を見なくて済むから。
さようならさようなら。

貴方は私が別れを告げても、きっと本当の私を見てなどくれない。だから…本当に好きなら追いかけて来てよ。私に本心の笑顔の1つでも見せてよ。

「…ねぇ涼太君」
「ん?」

端正な顔が私を見つめる。

「私…転校するの」
「…え?」
「だからね…別れよう」
「何…言ってんスか?」

遠距離なんて耐えられない、弱い自分の勝手な決断。まだこんなにも好きなのに、お別れをしなければいけないと思うと怖くて、怖くて。私は涙が出ないようにとギュッと拳を握った。

涙が堪えられなくなった頃、恐る恐る彼の方を向くと切ない表情で。

「名前は、俺のこと嫌いになったんスか?」
「今も、もちろん大好きだよ…!」
「俺だって、やっぱ名前の事嫌いになんてなれねぇっスわ」
「涼太君。」

私はバカだ。

こんなにも大好きな人を簡単に手放そうとするなんて。なんてバチあたりなんだろう。言ってから後悔しても遅いのに。

「だから簡単に別れるなんて言わないで」
「ごめん……、ごめんね。涼太君大好きです」

あなたへの思いの欠片はちょっぴり甘酸っぱい、ピンク色の季節に舞って消えた。私の思いも風に乗せてユラユラ揺れている。

これからはちゃんと想いを伝えよう。言葉にしなきゃ伝わらないことは沢山あるのだから。

今もサクラが咲くと思い出す、甘酸っぱい、恋の季節を。

「涼太君、大好きだよ。」
「もちろん俺もっス」