惚れた腫れた
先輩たちと共に駐輪場へ行き、そこで先輩らとは別れた。
先輩らはみんな徒歩通学。俺だけが自転車通学だ。
先輩というのはテニス部の先輩だ。
なんちゅーかあの人たちは元気すぎだ。テンションが低い時を見たことがない。試合となれば話しは別だが。
ふぅと小さく息を吐いて、自転車を出そうと手をかけたその時。
「ねぇ、そこの君!」
いきなり大きな声でそう呼ばれて、俺は気だるげに声のした方を見た。なんや煩いな。目を向けた先にいたのは一人の女。
その女も自転車通学なのか、自転車を手で運んできながらこちらに近づいてくる。見た感じは同い年に見える。
「……何?」
「そのピアスめっちゃかっこいいね!」
全く面倒な奴に捕まった。めんどくさかったが、少しだけ女の格好を観察してみることにした。
「つかさ、アンタ誰?」
小さな間があってから。
「あぁ、いきなりごめんなさい!私は名前です!苗字名前」
少女は人懐っこい笑顔を浮かべた。これが彼女との初対面。第一印象は、面倒で、元気な奴だった。
あの頃から時は経ち。今の名前は………
「いてっ!」
「うわっ!」
見ていてとても危なっかしい。何もないところで転けたり、壁に頭をぶつけたりと、まぁ常人の領域を超えたバカさ加減で。一体どうしたらこんなドジができるのか問いただしたいくらいだ。
名前のドジを不快だと思わないのは、多分…一緒にいると心地がいいからだろう。
まったく……
「ほんと…アンタから目が離せないッスわ」
「…え?なんか言った?」
「うるさい」
「いたっ!」
俺は名前のおでこにデコピンを食らわした。
なぜ俺はこんな奴を好きになってしまったのか。考えても考えても謎は深まるばかりだ。