対極的理論


私が以前煌帝国にいた時の話。
それはとてもとても昔の話。

私は一度目にこの世界にやってきて困っていた時、助けの手を差し伸べてくれたのは紛れもないジュダルだった。そんなジュダルは、最初は私を邪険にし邪魔者扱いしていたものの、日々一緒に過ごしていくうちに、いつの間にかなんでも話し合う仲になった。

まるで対極的な性格をしている私達が、不思議な程に仲良くなるのが早かった。そこまでの過程に時間は要らなかった。

そして、これはある日の暮れのこと。

私は何者かによって誘拐された。

ジュダルが、私を誘拐した男やその仲間たちに何をしたか分からないが、酷く恨まれるような事をしたのは確かだ。だって、ジュダルの名を呼ぶ彼らの目には憎しみが溢れている。

これは推測にすぎないが私が誘拐された理由は、ジュダルの近くにいる人間だからという理由があるからだろう。

私は必死に抵抗したが、それは意味を成さなかった。一歩壁を越えれば間違いなく沢山人がいる空間に、ただ一人取り残され、恐怖のあまり震えが止まらなかった事をよく覚えている。

「食事の時間ですよ」

食事のトレーをもって部屋に入ってきたのは若い男だった。丁寧な口調で人あたりのいい笑みを浮かべているその男性はベッドの横にある机にトレーを置いた。

「ありがとうございます…」

それから男に見守られて食事を取る。気まずいと言えたものではない。私が食事を完食したのを見届けた男は呆れたように言葉を放った。

「私達は別に貴方に危害を加えたいのではありません。貴方に危害を加えたと思わせて、早く…早くあの忌々しいジュダルと言う男を後悔させたいだけなのです。」

穏やかだった顔が、瞬時に憎しみへと変わった。

「でも、あの男も薄情ですよねぇ。こんなにも大切な貴方を見殺しにするなんて」

嘲るように笑う男に殺意を覚える。言っている事が私にとって残酷で、とても辛いものだったからだ。同時の不安が次第に心を蝕んでいく。

ジュダルにとって私が大切な存在なのかどうかは分からないが、互いに嫌いあってはいない。

だからこそ、心の何処かで彼を信じている私がいる。
彼は助けに来る、と。

元気もなくなりかけたその時、外で大きな物音がした。男達の野太い唸りや叫び声に混じって、壁にぶつかり合う音がする。

助けがきたの?
それとも、仲間割れなのか。敵か、味方か。震える手で目を潤ませた時、扉が開いた。 

現われたのは待ち焦がれ、来て欲しい願った人。

「ジュダ……ル」
「待たせて悪いな。」

ジュダルは自分の力を駆使して私の近くにいた男を吹き飛ばした。その瞬間全身の力が抜けて立てない状態にまで陥っていた。恐怖が疲労に変わった瞬間だった。

「遅いよ………。」
「だから悪いって!まさか、俺が助けにこないと思ってたのか?」
「もちろん、来てくれるって信じてた!」
「だろ?」

そのジュダルの無邪気な笑顔は私にとっての太陽だった。