勘違いから始まる
周りの顔色をうかがい、常にビクビクしている私にとって、お隣の席の緑間くんは憧れの存在だ。
堂々としているし、嫌なことは嫌だとはっきり言う。
強い言葉を言われれば、反論も自分の意見も言わずにただ頷く私とは違う。同い年なのに、その大人びた雰囲気は目を引いた。
そんな彼とはたまに会話を交わす程度で。
「んで…、名前ちゃんは真ちゃんの事が好きだと…?」
「そんな事一言も言ってなっ……!」
謂わば恋愛相談を高尾君にしたのが間違いだった。緑間君に1番近い人物と言えど、言う相手を選ぶべきだった。
「でもそーゆー事っしょ?」
「ん…そうだけど……。」
「はい、素直でいい子いい子〜。」
「ちょっと、なんか馬鹿にしてない?」
教室で騒がしくしている私達を余所に、緑間君は見向きもせずひたすら教科書と向き合っている。
そう言うところもいいなと思ってしまう。世俗に流されないのが彼のいいところ。
すると、教科書を読んでいたはずの緑間君が立ち上がって教室の出口へと向かった。どうしたものかと疑問に思っていたら、思いのほか早く帰ってきた。そして、なんと緑間君は私たちの元へと歩いてきたのだ。
「高尾、大坪さんが呼んでいるぞ」
「エ、マジ!?サンキュー」
私と話していた高尾君は教室を出て行った。そこに残された私と緑間君。そばにいるだけで心臓が高鳴る。
「お、お前は……高尾が好きなのか?」
静かな声だった。目の前に流れる川のせせらぎのように染み入る声。照れ隠しのようにぶっきらぼうに言う緑間君くんがおかしくて、心の中で笑った。高尾君は確かに良き友達ではあるけど、そういう感情を持ち合わせたことが一度もないのも事実だ。私がそれよりも好きなのは…。
「好きだけど、そう言う好きじゃなくて…えっと、その…。」
うまく言葉に出来ない。どうすれば彼に私の想いを告げられるの?
「私は、頑張ってるあなたが好きです。」
「………!」
「あの…ごめんなさい!」
一息に言ってしまってから、自分の言った言葉に息を飲んだ。そしてここが教室だということも忘れていた。不幸中の幸い、誰も私たちの会話を聞いていた人はいない。
どんなに口をつぐんでも今の言葉はもう取り返しがつかない。恥ずかしくて、堪らなくなってその場から逃げ出したくなり、その場を離れようとした時だった。
「待て」
「は、はい…!」
「俺は………。」
この緑間君の言葉の続きを知っているのは、世界で恐らく緑間君と私だけ。