君以外は見てないの


ジャーファルさんはいつも通りの模範となる格好をして政務をこなしていた。その様子を遠くからコッソリと見守る私。

すると遠くでジャーファルさんが席をさっと立った。
見るとスタイルのいい女性がジャーファルさんに向かって歩いていく。


ちらと横顔が見えた。彼女は自分など足下にも及ばないと思うほど、美しい女だった。お綺麗で、スタイルの良い方。ボ、ボンキュッボン……。

私はあんなに彫りの深い顔ではないし、肌はそんなに透き通ってないし、手足も長くないし、髪もあんなに長くて綺麗じゃない。そして胸もそんなに大きくない。

恋愛の機微には異常に疎いが、さすがに恋人である彼のことだけあってさらに敏感になっていた。

楽しそうに二人が話しているので、私はなんだか辛くなってきた。なんというか、この感情はきっと嫉妬だと思う。  

***

ジャーファルは人の気配に気づき、視線をそこに向け、名前が背を向けて歩いているのを確認した。それと同時に疑問と驚きを抱いた。他の場所で財務をこなしているはずの彼女が何故ここにいるのか、と。

「ちょっと失礼しますね」

女性に断りの言葉を述べるとジャーファルは名前を追いかけた。ジャーファルの視線の先で背を向けた名前の後ろ姿を見て全てを理解した女性は、ニヤニヤしながら彼の背中も見送った。

「名前!」

いきなり背後から手を掴まえられて、名前は肩をビクリと揺らした。しかも、その正体が、後をつけていたジャーファルだったため蒼白になった。

「あ…あの。どうぞ、あのお綺麗な方とお話になっていてください」

思わず声が震える。
普通、本当に互いを好きなのであれば恋人にこんな事を言われて嬉しくなる人はいないだろう。

「…もしかして、嫉妬してるんですか?」

案外早くバレてしまった。名前は顔を赤く染め上げ素直にこくりとうなずいた。

「全く…、本当にあなたという人はどこまで私を夢中にさせたら気が済むんですか。」

言葉と体を包み込まれる感触がしたのはほぼ同時だった。

「夢中…?」
「えぇ、そうです。………私は初めから貴方しか見ていませんよ」

照れ隠しをするかのように、ジャーファルは抱きしめる強さを強めた。それまで行き場をなくしていた両手はそっと彼の背中に回された。

照れたように笑うジャーファルさんが眩しくて、私は彼の長い裾を引っ張り顔を覆った。その様子を見てから、わしゃわしゃと撫でられた頭にそっと目を瞑った。