散ってしまう前に


灯りに照らされる屋台。
ざわめく人々。
キラキラ輝く星空。

今日は絶好のお祭り日和。
そんな中、人ごみを掻き分けて彼は私を見つけてくれた。

「わりぃ、待ったか?」
「ううん。全然待ってないよ。」

当然の決まり文句になった"待ってないよ"という言葉。本当は30分も待ったけど、翔君は多忙なスケジュールの合間を縫って私に時間をくれた。これ以上望むものはない。


私達は並んで歩いた。

小さい頃から憧れていた恋人つなぎで屋台を回った。
最初のうち、デートで照れを隠せない私たちは手をつないで歩くことは出来ずにいたが、今となってはそれは自然に出来るものとなっていた。と言っても、まだ恥ずかしい心は残っている。

「なんか、デート久しぶりだね」
「そうだな…。最近はドラマの撮影ばっかりでお前に会えなかったもんな」

苦笑いしながら言う翔君に、私は全てを察し、同時に熱いものが込み上げてきた。
会いたかったのに会えなかったのはどちらも同じだったんだね。

「まぁ今日は嫌なこと全部忘れて、パーっと行こうぜ!」
「うん、そうだね!」


明るい彼に助けられ、私たちはいろいろな屋台を回った。

金魚すくい、射的、クジ引き、チョコバナナにわたあめ…。
ぞして、私たちが屋台を一回りしきった頃。

ドン

そのとき夜空に一輪の花の花が咲いた。
夏祭りのメインイベントである花火大会が始まったのだ。来年もこうして隣で花火を見ていたいと言う思いは、恋人同士であれば当たり前の事だと思う。

「なぁ…、名前」
「?」

花火の音に掻き消されそうな声も、ちゃんと耳に届いた。翔君の方を向き直すと、彼も同じく私を見ていた。

「俺は何があってもお前を守るからな」

そして照れ隠しをするように、彼は私を包み込んでくれた。

「ありがとう」

私もぎこちなくそう返事をすると、彼が笑ったような気がした。その時夜空に最後の花束が咲き乱れ、ゆっくりと散っていった。