欲まみれの甘いキス


サンサンと注ぐ光に磨きたてられたように輝く海。そんな海は時としては牙を向き、時には人を襲うこともある。今日はその反対に比較的穏やかな表情を見せている。

海は空の色を映して深く沈み、大きくうねりながら、波頭を白くきらめかせている。こんなにも良い状態の海が目の前にあるのに渡しはどうしても乗り気ではなかった。

孝支君とは付き合って三ヶ月くらい経ったけど、一緒にいると未だに恥ずかしさはある。寧ろ他の人と一緒にいた方が平然としていられるくらい、孝支君には特別な感情を抱いている。いつでも初心でいるってことは大事だとは思うけど、ここまで照れるとは。恥ずかしさには限度がある。

「孝支君ーーー!ごめっ、遅くなっちゃって」
「そんなに急がなくて良かったのに。」
「ううん、早く泳ぎたくて!」

待ち合わせ場所に着くと、孝支君の新鮮な水着姿。ムッキムキってわけでもないし、ガリガリってわけでもない。所謂ちょうどいい体つきだ。そして下手すれば私より色白かもしれない。

「浮き輪、膨らませておいたから」
「わっ、早。ありがとう!」
「名前は浮き輪ないと泳げないもんな」
「う……。」

悔しいことに、まさにそれは真実だった。決して泳げないわけではないが、25mも泳ぎ切ったことは一度もない。水泳の授業は毎回憂鬱だったことは記憶に新しい。

「大丈夫、俺がついてるから」
「孝支君が言うと謎の安心感が湧いてくる…!」
「ははっ、なんだそれ。それじゃ泳ぎに行くか」
「はーい」

私は着ていたお気に入りのパーカーを脱いで、バッグの中に放り込む。

「準備できたー………!」

そして今気づいたけど、今私水着になってる!?そんな姿を孝支君に見られると…、こう、なんか顔から火が出て来そうなくらい恥ずかしい。途方もない恥ずかしさに足がすくみ、早くその場を逃げたいと思った。

「…あのさ、あ、あっちにいかない?」
「…う、うん?」

私の姿を確認するや否や、急に場所を移動し始めた。手をギュッと握って孝支君の行く道をついていく。行き先を知っているのは彼だけだ。

人通りの少ない砂浜に着くと、孝支君がそっと私に寄り添ってくれた。シャンプーの残り香が地肌のにおいと混じり合って辺りに漂う。愛おしさは変わらない。私はしみじみそう思っているのだった。

「……水着可愛い。凄く似合ってる」
「……!ありが、と…う」
「今の名前の事誰にも見せたくないんだけど…暫くこのままでいい?」
「…うん」

砂の上にゴロンと横になると、彼がそっとキスしてくる。ゆっくりと甘い口付けを交わした。孝支君の唇は少ししょっぱかったのだが、それはそれで構わない。そんなことを感じながら、ゆっくりし続ける。海辺で送る日もいい。例えこんなにひどく蒸し暑い時季でも。


単語
水着、独占欲