寒暖なんて虚無な世界


コート軽く引っ張り口元を隠しながら高校の敷地内を突っ切っている通りを歩く。

高校から家に帰るには体育館のすぐ横を通るのが一番の近道だ。

夏ならまだ太陽は沈んでいない時間帯だが、生憎と今は真冬だ。高校の敷地内は真夜中のような雰囲気を持って静まり返っていた。
 
痛む寒さに清々しさすら覚える。私は備え付けのベンチへと足を向けた。今日はここで待ち合わせだ。

息をする度出てくる白い息は幻想的にさえ見えてくる。東京では雪は滅多に降らない。でも寒さには耐えられず、何度も何度も太ももと手をこすり合わせて寒さを凌ぐ。

そうしている間にジャリジャリと足音が聞こえてきた。その正体が待ち人だと気づいたのは距離がすぐ近くになった時だった。

「ごめん。ミーティングで遅くなった」
「京治君、お疲れ様」
「早く帰ろう」
「うん!」


冬の夜道は、都会の街灯に照らされ、まずまずの明るさを保っている。その道を二人で並列で歩きながら冬についての会話をする。

「本当、冬は寒いね」
「待たせてごめん」
「ううん、いいの!京治君がバレー好きなの分かってるから!今はちゃんと暖か…」
「その割には…手冷たいな」
「……!」

京治君に不意に手を握られて、それこそ一気に体温が上がった。繋いだ手が離された次の瞬間、ふわりと何かが首に巻かれた。マフラーだ。いつも京治君が使っている赤と緑の奴。

「風邪はひくなよ」

マフラーからは染み付いた京治君の匂いと、先程までのほのかな体温が残っている。

「京治君の方こそ、風邪は引かないでね。スポーツマンなんだから」
「分かってる」
「あ、あとね私だけ温まるのも嫌だから…」

さっきと同じように私も京治君の手を握った。私より一回りも二回り大きい手を包み込むというよりも包み込まれるという表現の方が正しかった。

「ちょっとは暖かい…、かな?」
「全然寒くなくない…」
「そっか…、良かった」

二人だけの空間で口から出る白い息なんて、真っ白い雪なんて全く気にならなくなっていた。


ちょっとだけ風が強くなったように感じた。
二人だけの帰り道で、ふわりふわりと雪は舞う。

単語
学校帰り、マフラー